目に見えないメス 放射線でがんの根治をめざす

体の外からがんを狙い撃ち
放射線治療は、手術、薬物療法に並ぶがんの3大治療法の一つです。放射線が細胞内のDNAに作用して損傷させるという特徴を利用し、がん細胞を破壊してがんを死滅させます。放射線をがんに集中して当てることができれば、体を切開せずに手術と同じ効果を得ることが可能ですが、放射線は目で見ることはできません。見えない放射線を体の中でコントロールするため、医学物理学に基づく放射線の生体内での挙動の計算や計測技術が必要になります。
放射線を計測する技術を開発
がんのできる場所や大きさは人によって異なるため、正しい位置に正しい線量の放射線を照射できるように患者一人一人に合わせた治療計画が立てられます。放射線照射は、治療の効果を上げて、かつ副作用を防ぐため、95%以上の放射線の「線量の精度」と、1mm以内の精密な「位置の精度」が求められます。
治療計画ではCTの画像から、放射線の当て方を検討します。放射線をいろいろな方向から照射して、がんに線量が集中するよう、放射線の分布を計算します。このとき、脊髄や心臓などの放射線に弱い臓器に当たらないようにする工夫も必要です。CT画像を基にした臓器の輪郭は、これまで手作業で決めていましたが、AIによる識別システムが導入されつつあります。AIは計算にも使われ、治療計画を自動化するAIの開発も進められています。
こうして治療計画を立てた後は、放射線照射装置が計画通りに出力できるのかを測定して確かめる必要があります。見えない放射線を数値データなどによって可視化し評価する放射線計測技術が、放射線治療を支えています。
効果の高い粒子線治療
現在、医療現場で使われている放射線はほとんどがX線(光子線)です。これに対して、水素や炭素の原子核を光速近くまで加速して照射する粒子線は、質量があるため身体の深部に放射線を集中しやすく、より高い治療効果が期待されています。ただし、粒子線の線量計測技術は途上にあり、より精密な線量計測手法の開発も並行して進められています。
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