講義No.16391 医療技術 医学 物理学 生物学 理工系その他

目に見えないメス 放射線でがんの根治をめざす

目に見えないメス 放射線でがんの根治をめざす

体の外からがんを狙い撃ち

放射線治療は、手術、薬物療法に並ぶがんの3大治療法の一つです。放射線が細胞内のDNAに作用して損傷させるという特徴を利用し、がん細胞を破壊してがんを死滅させます。放射線をがんに集中して当てることができれば、体を切開せずに手術と同じ効果を得ることが可能ですが、放射線は目で見ることはできません。見えない放射線を体の中でコントロールするため、医学物理学に基づく放射線の生体内での挙動の計算や計測技術が必要になります。

放射線を計測する技術を開発

がんのできる場所や大きさは人によって異なるため、正しい位置に正しい線量の放射線を照射できるように患者一人一人に合わせた治療計画が立てられます。放射線照射は、治療の効果を上げて、かつ副作用を防ぐため、95%以上の放射線の「線量の精度」と、1mm以内の精密な「位置の精度」が求められます。
治療計画ではCTの画像から、放射線の当て方を検討します。放射線をいろいろな方向から照射して、がんに線量が集中するよう、放射線の分布を計算します。このとき、脊髄や心臓などの放射線に弱い臓器に当たらないようにする工夫も必要です。CT画像を基にした臓器の輪郭は、これまで手作業で決めていましたが、AIによる識別システムが導入されつつあります。AIは計算にも使われ、治療計画を自動化するAIの開発も進められています。
こうして治療計画を立てた後は、放射線照射装置が計画通りに出力できるのかを測定して確かめる必要があります。見えない放射線を数値データなどによって可視化し評価する放射線計測技術が、放射線治療を支えています。

効果の高い粒子線治療

現在、医療現場で使われている放射線はほとんどがX線(光子線)です。これに対して、水素や炭素の原子核を光速近くまで加速して照射する粒子線は、質量があるため身体の深部に放射線を集中しやすく、より高い治療効果が期待されています。ただし、粒子線の線量計測技術は途上にあり、より精密な線量計測手法の開発も並行して進められています。

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先生情報 / 大学情報

藤田医科大学 医療科学部 臨床教育連携ユニット 医学物理学分野 准教授 安井 啓祐 先生

藤田医科大学 医療科学部 臨床教育連携ユニット 医学物理学分野 准教授 安井 啓祐 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

放射線科学、放射線技術学、医学物理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

放射線治療は、人の身体の中での放射線の挙動のほか、細胞の状態やDNAの反応などいろいろな要素から成り立っていますが、そのすべてが目には見えません。それら見えないものを一つずつ可視化し、明らかにしていくところに放射線医療の魅力を感じています。医療関係の研究や仕事をめざして生物を選択する人は多いと思いますが、放射線医療では物理学はもちろん、コンピューターシミュレーションに必要な情報学なども役に立ちます。放射線医療を入り口に、いろいろな学問の貢献できる分野があることを知ってほしいです。

先生への質問

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藤田医科大学に関心を持ったあなたは

本学では、医学部(医学科・医工共創学科※)と医療科学部(医療検査学科・放射線学科)、保健衛生学部(看護学科・リハビリテーション学科)および大学院、研究室が1つのキャンパスに設置されています。日本屈指の病床数を誇り、最先端医療を担う大学病院を併設、恵まれた環境のなかで勉学に打ち込むことができます。また、チーム医療に必要なコミュニケーション能力の早期習得が可能で、すべての学部学科交流によるアセンブリ教育を必修プログラムとし、専門職連携をおこなう能力を段階的に身につけます。
※仮称・設置構想中