AIにできない人間の判断とは 「バイアス」を解き明かす

人間は「当たりをつける」
認知科学は、「知る」という行為を科学的に解明する学問です。中でも意思決定科学は、「大学選び」から「昼ご飯を何にするか」まで、日常のあらゆる選択を研究します。
選択を解明する上で鍵を握るのが「バイアス」です。バイアスと言うと「思い込み」や「判断ミス」のように聞こえますが、実はそうとは限りません。カフェで見知らぬ人が会話しているとき、内容が聞こえなくても「深刻な話をしていそうだ」と感じることがあるでしょう。限られた情報から素早く「当たりをつける」こともバイアスの一種です。バイアスは「誤りの原因」ではなく、素早く判断するための重要な働きでもあり、多くの場面で役に立っています。
バイアスとうまく付き合う
ただ、バイアスが誤りにつながりやすい場面もあります。裏目に出るのは、情報を十分に吟味しないで衝動的に判断してしまうときです。そんなとき、1秒だけ待つことで判断ミスが減ることが実験で示されています。じっくり考えられないときでも、一呼吸置くことはできるでしょう。SNSで気になる投稿を見かけたとき、すぐにリポストせずに1秒待つだけで、誤情報の拡散を防げる場合があります。バイアスの働きを知った上で、うまく付き合っていくことが大切なのです。
AIより人間がすごいところは
バイアスは、実はAIにはない人間の強みでもあります。人間は、バイアスを使って少ない情報からでも経験や感覚を手がかりに当たりをつけ、前例のない場面に対応できます。一方AIは、膨大なデータを学習して高度な処理をしていますが、過去のデータが少ない場面では判断を誤りがちです。AIが多くの仕事をこなせるようになっても、新たな問題や課題は常に生まれてきます。そうした未知の場面で力を発揮するのが、バイアスを持つ人間です。AIにはAIの、人間には人間のバイアスがあります。どちらが優れているかではなく、それぞれの特性を理解して組み合わせる力が、これからの時代に求められているのです。
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追手門学院大学 心理学部 心理学科 教授 本田 秀仁 先生
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