心の苦しさはからだの動きに表れる 動作からアプローチする心理療法

心の苦しさはからだの動きに表れる 動作からアプローチする心理療法

「わかった」ときめつけない

心理カウンセラーというと、悩みを優しく聞いてくれる人というイメージを持つ人は多いでしょう。しかし臨床心理学では、ただ話を聞くだけでは十分な支援になりません。例えば、悩みを打ち明けたときに「わかるよ、私も同じ経験がある」と返されると、話題が相手の体験に移ってしまい、自分の話を聞いてもらえなかったと感じることがあります。人はただ話を聞いてほしいのではなく、「そんな経験をしてきたんだね、だからそのように感じるんだね」と、自分という人間を理解してもらいたいのです。臨床心理学では、自分の経験から「わかった」と決めつけず、理解しようとする姿勢が大切にされます。

からだを動かして心に向き合う

臨床心理学には、「臨床動作法」という日本独自の心理療法があります。通常のカウンセリングは言葉を中心に行いますが、臨床動作法ではからだの動きを通じて心にアプローチします。うつ状態にあるとき、無意識に体に力を入れ続けてしまう人がおり、その人は「もっと気楽に」と言葉で伝えられても、どう力を抜けばよいかわからないものです。そこで実際にからだを動かしながら、力を抜く感じを一緒に確認していきます。言葉にしにくい苦しさを目に見えるからだの動きとして表し、扱える形にしていくのが臨床動作法の特徴です。

「説明する力」が心理職には必要

心理支援には絶対的な正解がありません。不登校の子どもにしても、学校に戻ることが必ずしも正解とは限らず、本人や家族によって望む形は異なります。正解が曖昧だからこそ、支援者は「どんな支援を行うのか」「どんなリスクがあるのか」を丁寧に説明しなければなりません。特に臨床動作法は、身体接触を伴う場合があるため、十分理解してもらうことが重要です。そのため臨床心理学では、支援者が支援の目的や方法を理解し、「なぜその方法を使うのか」「どのような注意点があるのか」を言葉で説明する力も重視されます。相手に安心して支援を受けてもらうためにも、「説明すること」は心理職の重要な専門性なのです。

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高崎健康福祉大学 人間発達学部 心理学科 講師 後藤 進吾 先生

高崎健康福祉大学 人間発達学部 心理学科 講師 後藤 進吾 先生

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臨床心理学

メッセージ

心理学を学ぶと、「人のことがわかるようになる」と思うかもしれません。でも実際には、わかる部分が増えるほど、わからないこともあることに気づいていくものです。それは人間の複雑さに向き合っている証拠だと思います。進路を考えるときも、「どんな仕事に就きたいか」だけでなく、「どんなふうに生きていきたいか」に向き合いましょう。どんな場所に住み、週末は何をして過ごすのか、そうしたことを思い描くことが、自分らしい選択につながるはずです。健康に毎日を過ごしていけることを願っています。

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高崎健康福祉大学は、医療や栄養、食農と生命、福祉や子どもの教育、それらの連携を助ける情報分野までを広くカバーする5学部9学科からなる総合大学としての環境が、きっと皆さんの成長と、目指すキャリアを叶えるための舞台となるはずです。2026年4月に、心の健康を支えるプロを養成する心理学科を新たに設置しました。