音を聴く脳の仕組みとは? 音楽で心が動く謎に迫る

演奏中の脳は超マルチタスク
楽器を演奏するとき、人は楽譜を読み、次の動きを計画し、指を動かし、出てきた音を聞いて修正しています。同時進行するこれらのタスクを脳がどう処理しているのかはまだあまりわかっておらず、解明するための研究が始まっています。
研究に必要なツールとして、ピアノ演奏中の奏者を動画撮影し、画像処理で指の動きを分析するシステムが開発されました。動画を使うのは、センサなどを体に付けると、演奏に影響を与えてしまうからです。このシステムを使って、演奏動作に関する脳の働きを解明し、さらには奏者一人一人の手に合った「最適な運指」を提案するシステムの開発も計画されています。
「錯聴」が起きる理由
私たちは普段、聞こえた音をそのまま感じているように思っています。しかし実際には、脳は音をただ受け入れるだけでなく、予測したり補正したりしながら処理していることがわかってきています。例えば、予想していた音の高さと違う音が急に鳴ると、物理的にはまったく揺れていないのに、音が揺れて聞こえることがあります。「錯視」と同様に、「錯聴」も起きるのです。脳波を計測する実験では、こうした知覚の揺らぎが、内耳の渦巻き管の蝸牛(かぎゅう)での処理ではなく、脳のより高次な認知処理と関係していることが少しずつわかってきています。
曲の終わりはなぜわかるのか
音楽を聴いていると、「ここで終わりだ」と自然に感じる瞬間があります。この「終止感」はなぜ生まれるのでしょうか。短調が悲しく聞こえる理由や、特定の和音の並びが心地よく感じられる理由も、科学的にはほとんど解明されていません。人が音楽の「終わり」を感じる背景には、頭の中に想定される音楽の枠組み(調性感)があると考えられています。それを明らかにするための実験も計画されています。
物理現象としては空気の振動にすぎない音が、重なったり並んだりすることで、なぜ人の心を動かすのか。謎への挑戦が始まっているのです。
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電気通信大学 情報理工学域 II類(融合系) 計測・制御システムプログラム (機械知能システム学専攻) 准教授 饗庭 絵里子 先生
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