体液中の酵素数が正確にわかる? 分子レベルの新計測システム

体液中の酵素数が正確にわかる? 分子レベルの新計測システム

光で分子の組成を見る

生体の中にある分子を見るには、蛍光などの標識を付ける方法がよく使われます。これに対して「ラマン散乱分光法」は、光を当てるだけで分子の組成がわかる技術です。分子が振動するエネルギーは構成する原子や結合の仕方によって異なり、散乱光の色から分子の組成を見分けます。標識が不要で、細胞本来の姿の計測などに向いています。
ただし、ラマン散乱光はとても微弱なので、微量物質の分析に課題がありました。そこで、銀などの金属微粒子を添加して信号を増幅させる「表面増強ラマン散乱(SERS)分光法」が生まれました。

SERS分光法を安定化する工夫

SERS分光法にも課題があります。目的分子の信号が大きく増幅する代表的なケースは、2つの金属微粒子が近接し、その隙間に分子が入った状態です。しかし、ナノスケールの微粒子を適切な距離に制御して信号強度を安定させ、毎回再現よく計測するのは容易ではありません。
そこで考えられたのが、金属微粒子の凝集体を作り、微粒子が近接してできる隙間をたくさん生み出す方法です。たくさんの隙間で増幅された信号の平均値を取ることで、安定して大きな信号を得られるようになりました。

ミクロの試験管

この凝集体を活用するのが、血液などの体液に含まれる酵素を1分子レベルで計測する技術です。計測に使うのは、微細加工でガラス基板上の樹脂膜に作った1千万個ものミクロのくぼみです。いわばミクロの試験管で、その一つ一つに金属微粒子の凝集体を作っておきます。目的の酵素と反応する基質物質を混ぜてから、各試験管に酵素が1個または0個になる条件で封入します。すると、酵素が入った試験管のみ基質との反応が進んで生成物が作られ、ラマン信号を検出できます。信号が出ている試験管を数えれば、試料中の酵素の数がわかるのです。同時に複数の酵素を調べられるのもラマン分光法ならではの特徴です。
この技術によって、体液に含まれる、病気に関連する酵素数などを正確に計測できるので、医療への応用が期待されています。

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徳島大学 理工学部 理工学科 光システムコース/ポストLEDフォトニクス研究所 教授 安藤 潤 先生

徳島大学 理工学部 理工学科 光システムコース/ポストLEDフォトニクス研究所 教授 安藤 潤 先生

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メッセージ

やりたいことがわからず、進路に悩んでいる人は多いと思います。私も高校時代は大学で学ぶ分野を決められず、応用自然科学科という自由度の高い学科を探して入学しました。高校の段階で将来の進路を決めるのはなかなか難しく、決めたとしても、それが最終的な仕事にならなくてよいと思っています。私自身、今の仕事につながる学問を最初から学んでいたわけではありません。しっかり勉強したことは、別の分野でも必ず役に立ちます。あまり悩みすぎず、その時少しでも面白いと思ったことに取り組んでほしいです。

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