薬の廃棄をなくすには? 医療費抑制に挑む実践薬学

薬の廃棄をなくすには? 医療費抑制に挑む実践薬学

今のままでは危うい日本の国民皆保険制度

日本の医療システムは、国民全員が公的医療保険に加入し、医療費を支え合う「国民皆保険制度」によって成り立っています。いつでも、どこでも、誰でも必要な医療を受けられる皆保険制度は、海外でも高く評価されています。しかし、医療費は増え続け、年間50兆円に迫っています。このままでは、現在の制度を支えることが難しくなってきます。
医療費のうち薬剤費は約2割で、年間約10兆円に上ります。薬剤費の抑制は大事な課題であり、医療現場の問題に取り組む「実践薬学」においても重要なテーマの1つとなっています。

高額でも余った注射剤は捨てられる

注射抗がん剤は、患者の体格(身長や体重)や病状によって投与量が決まります。例えば、1瓶100mgの薬を150mg必要な患者に投与する場合、2瓶を使用し、50mgが余ってしまいます。しかし、たとえ高額な抗がん剤でも余った薬剤は捨てなければならず、医療費の無駄になってしまいます。もし1瓶50mgの製剤があれば、このような無駄は生じません。
そこで、患者のデータや日本人の体重分布などのデータを用いて、「どの抗がん剤にどのような量の規格があれば廃棄が減るのか」をシミュレーションする研究が行われています。日本人は比較的体格が小さいため、海外基準で作られた製剤は余りが出やすくなっています。廃棄量を減らすことで、年間数百億円規模の薬剤費削減が期待されています。

後発医薬品(ジェネリック)の使用を促すには

薬剤費を抑えるには、先発医薬品よりも安価な後発医薬品(ジェネリック)の普及も大切です。国も後発品の使用を勧めており、後発品があるのに患者が先発品を希望する場合、差額の一部を自己負担する制度が2024年に開始されました。
全国の患者のビッグデータから、この施策の効果を調査、分析する研究も進められています。薬剤師の視点で実践的な調査研究を行うことで、薬剤費を抑制する効果的な方法が見つかり、薬が無駄なく使われる医療が実現できると期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

愛知学院大学 薬学部 医療薬学科 教授 中村 暢彦 先生

愛知学院大学 薬学部 医療薬学科 教授 中村 暢彦 先生

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実践薬学、医療薬学

先生が目指すSDGs

メッセージ

進路に悩んでいるなら、「自分のやりたいことは何か」だけでなく、「自分の長所や興味をどうすれば社会に活かせるか」を考えましょう! 私はがん専門薬剤師として病院で働いた経験から、薬剤師は確かな科学の知識と、患者さんに寄り添うやさしさの両方を大切にできる仕事だと感じています。
医療現場には、科学だけでは見えない、患者さんの不安や、治療による生活の変化があります。もし薬剤師をめざすなら、薬の専門家だからこそ気づける「心」に寄り添い、患者さんの人生や医療の現場に貢献できる人になってほしいです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

愛知学院大学に関心を持ったあなたは

愛知学院大学は、建学以来、時代の要請に応えながら社会に貢献できる人材を育成してきました。130年を超える歴史を通じて受け継がれてきたのは、人間性を重視する仏教精神です。禅の教えをもとに「行学一体」の人格形成に努め、「報恩感謝」の生活のできる社会人を育成することを建学の精神としています。10学部16学科+短期大学部で構成された中部地区有数の規模と伝統を誇る総合大学。日進・楠元・末盛と名古屋都心部に開設した名城公園の4つのキャンパスで約12,000人の学生が学修・研究に励んでいます。