抗がん剤の副作用を防げ! 血液分析で薬の量を調節

副作用寸前で薬を減らす
がんは、怖い病気というイメージがかつてありました。しかし近年は、医療技術や薬剤治療の進歩によって、診断後に5年間生存する確率がどんどん高まっています。例えば大腸がんの生存率は、2025年で67.2%にもなります。しかし、治療には患者に抗がん剤を投与し続けることが必要です。抗がん剤にはさまざまな副作用があります。大腸がんの患者の場合は、手足がしびれる末梢(まっしょう)神経障害になり、「抗がん剤をやめたい」と訴える人は少なくありません。現在、副作用に対する治療薬はありませんが、代わりに「副作用が出る寸前で薬を減らす」という用量調節の研究が進んでいます。
血中薬物濃度と神経障害との関連
抗がん剤の用量調節をするためにポイントとなるのが、薬の血中濃度を分析する技術です。血中濃度を分析した上で、さらにどのくらいの薬の量で末梢神経障害が出るのかを検証することが必要です。そこでマウスを使った実験が進められています。通常のマウスを針でつつくと逃げようとしますが、抗がん剤を投与したマウスは痛みを感じにくくなり、針でつついても逃げなくなります。マウスに対する薬の量と針の太さを変えながら実験を繰り返すことで、薬の濃度と神経障害との相関性がデータ化できます。そのデータを数理モデル化すると、人間にもあてはめることができます。
がん転移の仕組みに迫る
血液や体液を解析して腫瘍を発見する検査を「リキッドバイオプシー」といいます。リキッドバイオプシーによって、2010年代にはがんの部位からはがれたがん細胞は血液中にも流れていることが判明しました。それまでがん細胞は臓器のリンパ節からリンパ液を通じてほかの部位に転移すると考えられていたのです。この発見により、がんは血液を経由するという新たな転移の仕組みが明らかになりました。血液はとても多くの情報を持っています。血液を解析する研究ノウハウを生かして、薬物動態学はより幅広く医学に貢献しようとしています。
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