「生きること」を問い直す教育哲学

教育の「不思議」
教育というと、知識を教え、人を成長させる良いイメージがあるかもしれません。しかし教育には良い面だけでなく、人を傷つけたり、社会を誤った方向へ導いたりする危うさもあります。教育哲学は、教育に関わる思想の来歴を知り、「教育とは何なのか」を根本から考える学問です。
例えば学校では、時間に合わせた行動の仕方を学びます。時間を守ることで社会は便利になりましたが、一方で、私たちは時間に追われる苦しさも経験しています。教育は、人の生活を豊かにすることもあれば、追い詰めてしまうこともあります。幸せも不幸も生み出してしまう教育の「不思議」、そして人間の営みそのものの「不思議」に焦点を当てたのが、エーリッヒ・フロムです。
理性は人間を幸せにするか?
フロムは、「理性」の意味を問い直しました。ところで、近代社会における教育は、「理性的」に生きられるようになることを重視して発展してきました。しかし、理性的になった大人は、どのような社会をつくり出したのでしょうか。人間の理性、科学技術が発達してもなお戦争はなくならず、さらには、例えば原子爆弾のような、自らを破滅させてしまう技術まで生み出してしまいました。理性的になることをめざす教育は、人間と人間社会を本当に幸せに導くのでしょうか。
立ち止まって見つめ直す
フロムは、日本の思想家・鈴木大拙とも交流をもち、禅仏教の中に「よりよく生きる」ためのヒントを見いだしました。禅には、欲や執着を手放すという考え方があります。どこまでも能力を高め続けるのではなく、時には立ち止まり、自分自身をとことん見つめ直すという思想です。「西洋」と「東洋」の思想に学ぶことで、人の成長や幸せの意味を、「おもしろい」視点から問い直せるかもしれません。
AIが発達し、効率やスピードが強く求められる時代だからこそ、「人間らしく生きる」とはどういうことかが改めて問われています。フロムが問い続けたテーマは、今を生きる私たちが、あるべき教育を考え直すことにも深くつながっているのです。
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