平安時代の詩歌集の写本は見た目重視!

多彩な選集『和漢朗詠集』
平安時代中期に藤原公任が編さんした『和漢朗詠集』は、中国の漢詩、日本人が作った漢詩、和歌という3つの要素を、大きく春夏秋冬に分け、さらに花、うぐいすなどテーマ別に収録した選集です。
同じ「花」をテーマにしても、中国の漢詩では風景描写が中心である一方、日本人の漢詩では故事や比喩を用いた論理的な表現が多いなどの違いがあります。さらに、和歌では散る桜に焦点があたるなど、それぞれの特徴が見られます。
美術品であり書の手本
江戸時代に印刷技術が普及するまで、文学作品は手写しの「写本」で広まり、次の時代に伝わってきました。『和漢朗詠集』の写本は、金銀ぱくを散らしたり染めたりした「装飾料紙」に書かれた美しいものが多く、美術品のようでした。また、和歌はひらがな、漢詩は漢字で書かれるため、一冊の中でさまざまな文字表現ができるため、書き写すことが楽しまれ、書の手本としても親しまれました。
結果として、『古今和歌集』に次いで多くの写本が現存しています。
書き伝わるうち変わる本文
写本の多さゆえに、書き写されるたびに本文も多様に変化しました。変化の要因はさまざまで、書き間違いのような偶発的なものから、「この表現の方がよい」という意図的な改変まであります。口ずさんで覚えた歌を記憶のままに書いてしまう場合や、手習いの練習として写して、細かい誤りを気にしなかった場合もあったようです。これは、当時の人々が、作品を完全に同じ形で保存することよりも、自分なりに楽しみながら受け継ぐことを重視していたと考えられています。
現代の正確な「コピー」や「著作権」という感覚とは異なる文化があったのです。文学作品の内容だけでなく、「どのように読まれ、書き写され、変化してきたのか」を追うことで、人々の価値観や文化が広がる様子が見えてきます。千年前の本を通して、人間の感受性や創造性を感じることができるのです。
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京都精華大学 人文学部 人文学科 文学コース 准教授 惠阪 友紀子 先生
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