「古典の舞台」を地図に描くと、何が見える?

「古典の舞台」を地図に描くと、何が見える?

説話の結末は「場所」で変わる

平安時代の説話には、京都やその周辺のさまざまな場所が登場します。多くの説話から地名を一つ一つ拾い出してデータベース化し、地図に落とし込むと、意外な傾向が浮かび上がりました。
説話を「良い結末」と「悪い結末」に分類したところ、良い結果の話は都の周辺にある寺社に多く、悪い結果の話は都の内側に集中していたのです。周辺の寺社は都を守る「聖なる場所」であり、一方の都の内側は火事の記録も多く残る「日常の場」です。つまり、場所の持つ性質の違いが、物語の結末にまで影響しているのかもしれません。

「京」と「洛」の使い方

同様に、平安貴族が残した日記を見てみましょう。藤原道長をはじめとする貴族の日記から京都を表す言葉を拾うと、「京」と「洛(らく)」という二種類が使われていることがわかります。摂関家の中心にいる高位の貴族は「京」、実務を担う官人は「洛」を多く使っていました。
この背景にあるのは京都の地理的特徴です。平安京は左右対称に計画されていましたが、その西側は水はけが悪いため、住みやすい東側に人口が偏っていました。「洛」はもともと東側を指す言葉で、人口が東側に集中するにつれ、都市全体を表す言葉として定着していきました。実務を担う官人が実態に即した「洛」を使ったのは、自然な流れだったといえます。

古典の世界に入り込める旅

こうした研究の成果は、旅のプランづくりにも生かせます。例えば、修学旅行では有名なスポットを巡るコースになりがちですが、これでは何を学んだか印象に残りにくいものです。
そこで効果的なのが、テーマを設定して旅のプランを組む手法です。大学の講義では「院政期の京都―平清盛と後白河院―」などの旅のプランを参考に、学生自身がテーマを設定し、「渡来人・秦氏の足跡をたどるコース」などを作りました。テーマがあることで点在する場所が意味を持ってつながり、旅が深い学びに変わるのです。こうした古典の舞台を歩く旅は、京都に限らず、全国各地で生まれる可能性があります。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

滋賀大学 教育学部  准教授 安藤 哲郎 先生

滋賀大学 教育学部 准教授 安藤 哲郎 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

人文地理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたの身の回りにも、気づかれないまま残っている歴史の痕跡がたくさんあります。通学路にある古い道や建物が、なぜそこにあるのか、と少し意識を向けるだけで、見慣れた風景がいつもと違って見えてくるはずです。地理と歴史は教科書では別々の科目ですが、実は密接につながっています。まずは街を歩いてみましょう。小さな変化や疑問に気づくはずです。机の上で地図を眺めながら旅を想像するのでも構いません。想像の先に旅の計画を創造しても良いですね。身近な風景への好奇心が、過去と現在をつなぐ学問への第一歩になります。

滋賀大学に関心を持ったあなたは

滋賀大学は新しい価値を創造する未来創生大学を目指します。未来を拓く力のキーワードは、データサイエンスリテラシーとリベラルアーツです。Society5.0時代における読み書きそろばんである数理データサイエンス・AIの基礎能力と、複雑化した現代社会の問題を解決するために必要とされる幅広い知識や、複合的な視点からアプローチできる総合力を身につけたうえで、柔軟かつ多様な文理融合(他分野複合)型専門性を持った問題解決型の人材を育成し、社会と共に未来創生に貢献する大学を目指します。