「見えない構造」を可視化して、より良い意思決定へ

「三密を避けよう」の裏にある分析
コロナ禍には「三密を避けよう」というメッセージがしきりに唱えられました。しかし、なぜ三密がダメなのでしょうか。メッセージを出した背景には、「どこが感染しやすいか」「どんな行動が感染リスクを高めるのか」をデータで解析し、防疫戦略として打ち出したプロセスがあります。この分析に活用されているのが、「PSE(Process Systems Engineering)」という考え方です。もともとは工場や化学プラントの設計・運用のために発展してきた学問ですが、その本質的な考え方をさまざまな分野の課題解決に応用しようと研究されています。
構造から解決策を提示
PSEがさまざまな分野に応用できる理由は、対象を「構造」としてとらえ、モデル化するアプローチにあります。口蹄疫(こうていえき)や新型コロナウイルス感染症の研究では、「どこが感染しやすい構造になっているか」を事前に可視化することで、感染してから対処するのではなく、感染しないための戦略を立てることができました。構造を可視化するだけでなく、その上で解決に向かう意思決定にまでつなげられるのが、この研究の大きな特徴です。
電子図書館が使われないのはなぜ?
PSEを応用し、電子図書館の利用促進という異分野でも研究が行われています。「電子図書館を使っていない人」をひとくくりにせず、使わない理由ごとにグループ分けすることで、それぞれに効果のある対策が設計できます。例えば、電子図書館の存在を知らない人には周知が必要、コンテンツに不満がある人には蔵書の改善が有効、というように、同じ「使っていない人」でも必要なアプローチはまるで異なるのです。こうした人の行動の理由やニーズを探るアンケートの設問設計にはLLM(大規模言語モデル)を活用し、AIとの対話を通じて調査の精度を高めようとしています。「構造を可視化し、より良い意思決定につなげる」というPSEの考え方は、これからもさまざまな分野へ広がっていくでしょう。
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