20世紀の女性の生き方とは 英国人女性作家の小説から読み解く

フェミニズム運動の先駆け
今ほど女性の社会的地位が高くなかった頃、一人の英国人女性作家の書いた小説『THE GOLDEN NOTEBOOK(黄金のノート)』が、女性の権利獲得を求めるフェミニズム運動家たちに高く評価されました。著者はドリス・レッシングといい、1919年生まれでアフリカのジンバブエで育ちました。南アフリカで働きながら政治や社会学の本を読み、人種問題に関心を持ち、共産主義に傾倒した時期もありました。英国に戻った彼女が1962年に出版した同著は、スランプに苦しむ女性作家の内面の分裂と再生を、第二次世界大戦後の複雑な社会状況とともに描いたものです。
ケアの考え方の変化
当時のフェミニズム運動は、「女性はこうあるべき」という男性中心のものの見方から解放を求めていました。女性は常に他者のことを察し、周囲と共感し、思いやりを持つ役割、つまり他者を「ケア」する役割を課せられていたのです。アメリカのベティ・フリーダンが1963年に出版した『女らしさの神話 』で、専業主婦として家族を支えることを女性の幸福とみなす価値観を指摘しました。その影響もあり、フェミニズム運動の一部では女性を「ケア」の役割から解放しようとする動きが広がりました。やがて1980年代に入ると、ケアは大切なものでポジティブに評価しようとする考え方が出てきました。女性を取り巻く社会の変化とともに、ケアの価値に対する考え方も変わってきたからです。
登場人物を通じた体験
『THE GOLDEN NOTEBOOK』を現代の人が読んでも、すぐに理解できないかもしれません。それでも読者は物語の人物と自分を重ねて思いを寄せたり、批判的に見たりして、「なぜこんな役割を担い、行動に出たのか」と考えます。そして「もしかしたら今と違う倫理観や社会的背景がそうさせたのでは」と思いを巡らすことができます。時代や社会によって異なる多様な考え方や価値観について、登場人物という他者を通じて触れ、追体験できることに、文学作品を読む一つの意味があります。
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