映画から社会が見える 中国映画の意外な背景

映画から社会が見える 中国映画の意外な背景

大ヒット映画の裏に

映画は娯楽である一方で、政治や社会が反映されるものでもあります。
例えば中国の映画には、国の歴史について特定の価値観を伝える「プロパガンダ」の側面があります。かつてこうした要素が強い作品は、若者にはあまり人気がありませんでした。しかし近年では、1980年代以降世界的に注目を集めるようになった香港映画の監督や制作陣が中国本土での映画制作に参加したり、若手スターがキャスティングされたりするなど、その状況が変わってきました。娯楽性の高いしかけが取り入れられたことで、爆発的なヒット作も生まれるようになりました。

進化する中国アニメ

政治や社会と距離を置いた商業映画も勢いがあります。例えばアニメはそのひとつです。2025年に公開された中国のCGアニメ映画『ナタ 魔童の⼤暴れ』は、アニメ映画として世界歴代1位の興行収入を記録しました。中国は国を挙げてコンテンツ産業に力を入れており、映像技術も飛躍的に進化しています。ただしアニメのヒット作は、中国の伝統的なキャラクターを使ったものが多く、世界の市場に入りこむためには、中国文化になじみがない人たちをいかに引き込むかがカギとなります。

映画の見方が変わるとき

現在の中国映画を支えているのは、主に民間の制作会社で、政府主導で作られているとは言えません。しかし、建国記念日など重要な節目には、それに関連したテーマの作品がたくさん登場します。こうした作品は公開が制限されにくく、また宣伝も容易なため、興行収益を上げやすい題材でもあるのです。
このように、中国の映画やアニメは娯楽として楽しめる一方で、政治や社会の影響を受けて生まれています。ただしそれは中国だけのこととは限りません。作品をストーリーや映像だけでとらえるのではなく、制作された背景や時代状況に目を向けることも大切です。どのような意図や背景により作られているのかを考えることで、映画の見え方は大きく変わります。普段何気なく見ている作品の中にも、新しい発見があるはずです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

同志社大学 グローバル地域文化学部 アジア・太平洋コース 教授 阿部 範之 先生

同志社大学 グローバル地域文化学部 アジア・太平洋コース 教授 阿部 範之 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

中国映画論

メッセージ

勉強はもちろん大切ですが、それと同じくらい自分の好きなものを大切にしてください。好きなことを深く知る経験は、自分だけの視点や個性になっていきます。自分では当たり前だと思っていることが、ほかの人にとっては驚くような知識かもしれません。それは強みであり、将来必ず生きてきます。それがもし映画に興味があるなら、ただ見るだけでなく、同じ監督やテーマの作品を見たり、時代ごとに見比べたり、背景を調べたりすると、新たな違いや共通点に気づくことができます。好きなものを少し深めるだけでも、世界は広がっていきます。

同志社大学に関心を持ったあなたは

同志社大学は14学部34学科16研究科・学生数約29,000人を擁する総合大学です。2025年に創立150周年を迎え、さらなる教育・研究改革を進めています。
教学面においては、今出川・京田辺の両校地で年間約12,270の科目・クラスを開講し(2025年度)、そのうち14学部共通で学べる「全学共通教養教育科目」を約3,300科目・クラス設置しています。さらには、他大学との単位互換制度や副専攻制度を設置するなど、学生の興味・関心に合わせて自由に学ぶことができる充実した学習環境を整えています。