現代のネット並みの影響力? 社会を動かしたイギリス小説の力

特権階級の文学から万人の娯楽へ
私たちが普段読んでいる「本」は、昔から今の形だったわけではありません。19世紀中ごろまでのイギリスでは、文学作品は全編書き下ろしで、一部の特権階級だけが買えるものでした。本には表紙もなく、大きな紙を四つ折りにした状態で販売されていました。読者はそれをペーパーナイフで切り開き、ページを作って束ねて読んでいました。革や金糸などで立派な表紙を仕立てて、インテリアとして飾ることも流行したようです。
この本の常識に革命を起こしたのが、イギリスの作家、チャールズ・ディケンズです。彼は紙の質を落とし、物語を分割した「連載形式」で、安価な小説を売り出しました。この画期的なアイデアにより、労働者から特権階級まで誰もが手軽に小説を読めるようになったのです。
共通認識を生むメディア
現在、私たちは隣人の暮らしは知らないのに、宇宙飛行士の宇宙での過ごし方は知っています。これらはテレビなどのメディアが人々の共通認識をつくった結果です。実は19世紀のイギリスも、メディアがつくる共通認識で社会が動いた時代でした。当時は、お金持ちと貧しい労働者が、同じ国に住みながらも互いの生活を知らない「分断された社会」でした。しかし安価な連載小説が普及し、幅広い階層の人が読書を通じて互いの暮らしを知るようになりました。そして、お金持ちの階層に貧しい人々の生活が共通認識として広まり、「同じ国にこんなに苦しむ人がいるなら、社会福祉にお金を使わなければ」と意識が変わり、社会全体が動くきっかけになったのです。
文学の影響力を読み解く
つまり、19世紀のイギリス小説は、現代のメディア並みに社会を変革する力を持っていたと言えます。文学作品を読むときに作者の考えや背景を知るだけでなく、その本がどのように出版され、社会にどんな影響を与えたかを知ることで、メディアとして娯楽以外の役割があったことがわかります。このように、異なる視点から文学を読み解くと新たな発見ができるのです。
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