「女ことば」とジェンダー

「女ことば」と女性の主体性
映画や文学、ドラマ、アニメの中で、自分の意志を持つ「強い」女性が描かれることが増えています。その一方で、海外の作品が日本語に翻訳されるとき、「~だわ」「~なのよ」といった言い回し、いわゆる「女ことば」で話している場面もよく見られます。こうした翻訳によって、原作で描かれていた女性の強さや主体性の見え方が変わり、場合によっては、男性に従属しているような印象が生まれることもあります。これは翻訳の問題であると同時に、ジェンダーの問題にもつながっています。
「翻訳者には女性が多い」?
では、翻訳者の状況はどうでしょうか。一般的に「翻訳者には女性が多い」と言われることがありますが、そこには、女性が文壇で活躍することが困難だったという歴史的背景も関係しています。原作が「主」、翻訳が「従」とみなされるような価値観の中で、女性は創作の中心ではなく、翻訳という周辺的な領域に位置づけられてきたとする考え方もあります。「翻訳者には女性が多い」という言説についても、そのような背景を踏まえたうえで、より詳細に分析していく必要があります。
無意識の影響
日本における女性の話し言葉の翻訳傾向は、江戸時代から明治時代にかけて、女性の話し方に関する規範が形成・強化されていった流れとも関係しています。「女性はこのように話すもの」という社会的なイメージが、女性の語りの訳し方にも影響していると考えられます。
翻訳学においてジェンダーの視点を取り入れた研究は比較的新しいものです。日常の中でなんとなく受け入れられている表現や規範が、人に無意識の影響を与えている可能性に目を向けることは大切です。AI翻訳が急速に普及する現在、AI翻訳とジェンダーの関係性についての考察も必要でしょう。問題に向き合うための第一歩は、まず「意識すること」です。AI翻訳によってより翻訳が身近になるいま、新たな視点もそこから見えてくるのではないでしょうか。
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