失われた城の姿とは? 図面と発掘から読み解く日本建築史研究

消えた安土城の謎
安土城は、織田信長が築いた巨大な城として知られています。しかし、完成からわずか数年後には焼失してしまったため、どのような姿をしていたのかは長年の大きな謎となっています。特に天主の内部構造は資料が少なく、研究者によって違う復元図が提唱されています。そんな失われた城の姿を、発掘調査や古文書、建築の知識を組み合わせて解き明かす研究が進められています。細かなピースを当てはめるパズルのように、少しずつ本来の姿へ迫っていくのです。
図面と文献から城を復元する
安土城の天主では、発掘調査によって地下部分に碁盤の目のように規則的に並んだ石が確認されています。しかし中央部分だけに石が見当たらず、穴を埋め戻した跡が確認されました。この謎の穴跡について、研究者たちは議論を続けていましたが、そこで注目したのが、これまで研究に使われてきた発掘調査の正式な報告書ではなく、発掘当時に描かれた原図です。
原図には、正式な報告書には残されていない細かな観察内容まで記されています。これを、織田信長の業績を記録した文献「安土日記」に記された巨大な柱の記述と照らし合わせることで、天主の中央に太い柱が立ったこと、謎の穴跡がその柱を抜き取った痕跡だということが明らかになりました。このことから、安土城は後の近世の城郭につながる特徴を備えた先進的な城だったことが見えてきたのです。
地域の建築文化を未来へ残す
こうした研究が役立つのは、有名な城だけではありません。実は、私たちが普段暮らしている地域にも、江戸時代に建てられた寺社や古い建物が数多く残されています。しかし、調査もされず、その価値が十分に知られないまま取り壊されてしまう例もあります。だからこそ、地域に暮らす人たち自身が、身近な建物の歴史や特徴に目を向け、調査していくことが大切です。
建物を知ることは、その土地の歴史や暮らしを知ることにつながります。建築史研究は、歴史を検証するだけでなく、地域の伝統文化を守り、持続可能な地域づくりにつなげる研究なのです。
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広島大学 文学部 准教授 中村 泰朗 先生
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