創薬の可能性を大きく広げる! 世界初の材料を作る研究

薬を構成する元素
多くの医薬品は、自然からとれる天然物を使って作られています。天然物は、炭素や水素、窒素、酸素など、もともと人間の体内にもあるような元素の組み合わせでできています。
しかしこうした従来の元素の組み合わせだけでは、作り出せる薬に限界がありました。製薬企業にとって、前例のない元素を使うことはリスクが大きく、また収益性の見えない新たな材料の研究も困難です。そのため、さまざまな元素を使った新たな化合物を作り、機能や反応の高さ(活性)を調べる基礎研究が大学で進められています。
ホウ素は薬の材料になるか?
新たに化合物作りに使われ始めた元素は、ホウ素、ケイ素、鉄、リンなどです。特にホウ素を使った医薬品は2003年から作られ始め、有用性が広まり始めています。ホウ素で作成した分子を用い、従来の医薬品に使われている元素を代用する研究も行われています。
例えばホウ素を正十二面体に組み合わせた「カルボラン」という分子です。カルボランは、この構造で活性が出るはずがない、と研究者たちから思われていました。ところが、「リガンド」という化合物の一部にカルボランを使うと、乳がんや前立腺がんなどの標的を抑制する「ステロイドホルモン系」の高い活性を見せたのです。一方、炭素で似たような構造の分子を再現してリガンドを作っても、活性は出ませんでした。
常識を変える発見
研究の過程で、リガンドの常識も覆りました。リガンドは複雑な構造をしており、きっちり固定された分子が動いてしまうと活性は出ないと考えられていました。しかし分子の一部をカルボランに置き換えても機能が変化しなかっただけでなく、ほかの分子を固定しなくても問題ないことが明らかになりました。また、カルボランを入れる位置や必須の分子など最低限の要素を守れば、複雑だった構造も大幅な簡略化が可能です。カルボランのほかにも創薬などに応用できるパーツや知見を増やすため、新たな化合物作りと活性の評価が続けられています。
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