逆問題の新アルゴリズムで、より安全な医療イメージングを

断面画像を作るトモグラフィー
体内の状態を診断するときに用いられるCTとは、「コンピューテッド・トモグラフィー」という手法を使ったイメージング(画像化)技術の略称です。トモグラフィーとは、体内を「輪切り」にした断面の画像です。X線をたくさんの方向から体に当て、透過後のX線の数値を計測してコンピュータで計算し、画像を生成するのです。トモグラフィーは医療だけでなく、工業材料や地球内部のイメージングなどさまざまな用途があり、X線以外に音波や光も使われます。
原因から結果を求める
トモグラフィーを支えるのが、結果から原因を推測する「逆問題」という応用数学の概念です。例えば、X線が体内を通るときの振る舞いを「y=ax」という方程式で表せるとすると、照射するX線量をx、透過後のX線量をyとしたときに、その間にあるaという係数(体内の状態)をx、yの数値から求めるのです。
しかし、実際の放射線や光の振る舞いはもっともっと複雑で、累乗など「非線形」の項がいくつも含まれており、係数を求めることが困難です。そのため、計算を単純化して「近似値(おおよその値)」を求めて画像を作ります。
画期的なアルゴリズムで医療が変わる
現在、X線より人体に負荷の少ない「近赤外線」でイメージングする技術が研究されています。しかし、近赤外線はX線と違い、体内で「光散乱」を起こすため、光の振る舞い方を表す方程式が複雑で、逆問題の計算がさらに難しいのです。つまり、近似値の精度が低く、正確な画像を作りにくい難点があります。そこで、従来使われていた「リトフ近似」という計算方法に、非線形の項を統合するアルゴリズムが開発されました。30年来の難問を解決した画期的な開発で、このアルゴリズムの計算結果は実験結果とも合致します。
この技術であればX線よりも安全性の高い近赤外線が使えるため、新生児の脳内を見ることもできます。近赤外線の装置は小型なので、簡便に診断できるというメリットもあります。今後の医療が大きく変わることが期待されています。
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