なぜこうなっているの? 古地図から地域の価値を再発見

なぜこうなっているの? 古地図から地域の価値を再発見

不思議な風景に隠された歴史

街の風景を見て、「なぜこうなっているの?」と不思議に思ったことはありませんか。例えば、くねくねと湾曲した特徴的な道は、実は、そこにかつて川が流れていたことが古地図からわかります。広島のとある地域では、住宅の基礎部分に古い石積みが残されていました。住宅前の道路が緩やかにカーブしていることに着目し、古い地図と見比べると、その石積みはかつての護岸だったことがわかりました。このように、古い地図と現在の風景を重ね合わせることで、普段は気づかない地域の歴史や特徴が見えてきます。

「地域」を知るには

地域について調べる研究で重要になるのが、「テリトーリオ」という考え方です。イタリア語で、単に「地域」を意味するのではなく、自然環境の上に人々の暮らしや歴史、産業、食文化、共同体の記憶が積み重なって形成された空間を指します。
例えば、イタリアの水上都市ヴェネツィアは、都市だけで成立しているのではありません。背後に広がる川や農地、港町との関係によって街の暮らしは支えられてきました。つまり、街を単独で見るのではなく、周辺地域との関係性を含めて理解することが重要なのです。それをひも解くため、古地図や文献を分析し、実際に現地を歩いて調査しながら、その土地がどのように形成されたのかを探ります。人々の生活や文化まで考えることで、地域の特徴は見えてきます。

未来につながる価値を見つける

こうした研究は、地域の魅力を再発見し、未来へつなぐことにも役立ちます。住民が地域の歴史や文化を知ることで、「何もない普通の街」だと思っていた場所も、その土地ならではの特徴があることに気づきます。地域の価値を住民自身が理解することで、観光やまちづくり、地域活性化の取り組みにつながっていきます。地域に残る風景を読み解き、未来へ生かすことは、持続可能な社会づくりにつながっているのです。

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近畿大学 工学部 建築学科 講師 樋渡 彩 先生

近畿大学 工学部 建築学科 講師 樋渡 彩 先生

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都市史

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メッセージ

イタリアに留学していたとき、住んでいた家の木材に不思議な傷がついていることに気づきました。最初は何かわからなかったのですが、調べてみると、それがヴェネツィアの町をつくる際に製材された木につけられた刻印だと判明したのです。普段は見過ごしてしまうものでも、「これは何だろう」と疑問を持つことで、新しい発見につながります。ぜひ、自分の住む街もそうした目線で歩いてみてください。当たり前だと思っていた風景の中に、歴史や地域の特徴を示す痕跡が隠れているかもしれません。

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近畿大学工学部は、広島県(東広島市)にキャンパスを構える大学で、化学生命工学科、機械工学科、ロボティクス学科、電子情報工学科、情報学科、建築学科の6学科で構成されています。西日本屈指の総合大学の1学部であるというスケールメリットを生かした、研究環境や就職支援体制も魅力です。実験・演習を重視した実践的な教育を展開し、地域や企業と連携しながら、社会に役立つ研究に力を入れています。