その場で生き抜く植物たち 遺伝子が制御する驚きの戦略

その場で生き抜く植物たち 遺伝子が制御する驚きの戦略

気孔のCO₂応答

気孔は葉の表面に無数に開いている小さな穴のことで、CO₂を取り込み、水蒸気を放出するガス交換の出入り口です。その応答速度は速く、乾燥状態になるとわずか10分以内に閉じ始めることがわかっています。さらに周囲のCO₂濃度が上がると閉じ、下がると開くという精巧なセンサ機能まで備えています。
気孔が開くと水分が蒸発し、その気化熱によって葉の温度が下がります。この性質を利用し、サーモグラフィーで葉の温度を測定すると、気孔の開閉に異常がある植物が見つかります。正常な植物と比較することで、CO₂応答性に関わる複数の遺伝子が発見されました。

ゼニゴケの重力応答

植物は重力を感知しており、その仕組みにも細胞レベルのメカニズムが隠れています。ゼニゴケを暗い場所に置くと、葉状体の一部から細い構造体がまっすぐに上へ伸び、途中で向きを変えても再び上向きに伸びることがわかりました。これは重力を感知している証拠であり、仕組みの鍵を握るのが先端部分に存在するデンプンを含むアミロプラストです。デンプンのない変異体では、曲がりながら上へ伸びるので、ゼニゴケにおいても正常な重力屈性にはアミロプラストが重力の方向を検知するセンサとして働いていると考えられています。

細胞内で行われる配達

「PATROL1」は、気孔を開くために必要なタンパク質を細胞膜に運ぶ役割を担っています。その働きを強めると光合成が活発になり、植物が大きく成長することもわかってきました。また、PATROL1は葉だけでなく根でも細胞の成長に重要な役割を果たしている可能性があります。
また、植物病原菌が持つサイトカイニン遺伝子は植物ゲノムに導入され、植物細胞内でTmrタンパク質となり、葉緑体へ運ばれます。通常、葉緑体行きのタンパク質には切符のような配列があるのですが、Tmrにはありません。
植物の環境応答、病原菌の適応戦略の謎はまだ数多く残されています。それらを解き明かそうとする過程で、これからも新しい発見が生まれていくはずです。

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名古屋大学 農学部 応用生命科学科 植物情報分子研究室 講師 橋本 美海 先生

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