あのアニメはなぜヒットした? 作品の背景を多角的に見る

あのアニメはなぜヒットした? 作品の背景を多角的に見る

作品を形づくるのは

アニメ作品は、芸術性というクリエイティブな面と、その価値をどのように届け、利益を得るかというビジネス面の二つが絡み合ってできあがっています。クリエイティブは作り手だけでなく、制作技術の発展や変化、ビジネス環境の変化といった要素からも大きな影響を受けるのです。
「クリエイティブの内容を読解すること」と「作品成立のビジネス的背景を調べること」の両輪を研究することが、歴史的視点も含め、アニメを深く鑑賞する視点を提示することにつながります。

物語を象徴する描き方

クリエイティブに注目するということは、映像を読解することでもあります。例えば、『サマーウォーズ』では、夏の夜、田舎のお屋敷に親族が集まっているところに、親族を裏切り疎遠になっていた男性が現れます。お屋敷の大広間は照明で明るく、男性がいる庭は明かりの外で暗く、男性の立場を暗示します。しかしその男性に、飼い犬が甘えます。そこから観客は「この男性は実は優しい人なのでは?」と予感します。優れた作品は、必ずこのように登場人物の感情や物語の背景を象徴的に描きだしています。アニメ作品の読解をトレーニングすると、作品への理解が深まり、人生が豊かになります。

ヒット要因はさまざま

一方、クリエイティブだけがヒットの根拠ではありません。ジブリ作品は、90年代から培ったブランドへの信頼に加え、21世紀になってからはシネコンの普及が大ヒットを支えました。一方、少年漫画原作の『鬼滅の刃』は、視聴率の低い深夜放送だったにもかかわらず、ハイティーンの視聴者だけでなく小学生も巻き込んで人気が広がりました。背景にあるのは、録画機器の普及と、多数の配信プラットフォームでの配信、さらに子どもからの人気が少年漫画に親しんだ親世代にも波及します。この連鎖が映画の大ヒットにつながりました。商業的な背景を読み解くことで、クリエイティブとは異なる側面からヒットを分析することができます。

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先生情報 / 大学情報

東京工芸大学 芸術学部 アニメーション学科 教授 藤津 亮太 先生

東京工芸大学 芸術学部 アニメーション学科 教授 藤津 亮太 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

日本アニメ史、アニメ作品評論

先生が目指すSDGs

メッセージ

「好きなアニメがある」ということと「アニメが好き」ということは違います。自分が思う好きなタイプの作品の範囲だけに興味をとどめず、自分の「好き」の枠を超えて、見たことのないタイプの作品や縁がないと思っていた作品を見ると、アニメという表現の多様さや可能性が感じられるようになります。「アニメが好き」という視点を手に入れることで、消費者という立場にとどまらず、観察者、創作者の視点に近づくことができるのです。

先生への質問

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東京工芸大学は 1923(大正 12)年に創設された「小西寫眞(写真)専門学校」を前身とし、創設当初から「テクノロジーとアートを融合した無限大の可能性」を追究してきました。
工学部と芸術学部の 2 学部を有し、工学部は 1 年次に写真とデザインを学ぶことで芸術的なセンスを身につけ、芸術学部はメディアアートを通して工学的な技術を身につけるという、一見相反する両分野を融合させた教育を実践しています。