ファッション誌、インスタグラム、報道メディア? 浮世絵の多彩な役

江戸時代の推し活を応援
現代よりも娯楽が少なかった江戸時代、庶民の身近なエンターテインメントは歌舞伎でした。芝居小屋は、観客が一つになって笑ったり涙したり、物語に没入する非日常空間だったのです。
人気役者は大量印刷された浮世絵版画の題材となり、人々は好きな役者や名シーンが描かれた「役者絵」や、うちわに描かれた「うちわ絵」をこぞって買いました。また、「好きな役者にあの役をやってほしい」という願望を満たすため、架空のキャスティングで描いた「役者見立(みたて)絵」も好評で、江戸時代の人々にも現代の「推し活」に通じるファン心理があったことがわかります。
「メディアミックス」展開も
『南総里見八犬伝』『児雷也豪傑譚話』など江戸時代を代表する人気小説は、歌舞伎だけでなく浮世絵、絵草紙、すごろくなどさまざまな芸能やメディアによって表現され、一大ブームを巻き起こしました。現代の小説のアニメ化や実写化と同じように、一つの作品を多様な媒体で展開する「メディアミックス」は、江戸時代でも活発に行われていたのです。
人々は「子どもも大人もみんなで作品の魅力を楽しもう」と考える、豊かな心や文化を持っていました。また、当時は現代のように著作権法による規制はなく、浮世絵師たちは小説や歌舞伎、浮世絵も含めた人気作品を参考に、独自の工夫を加えて新しい表現を生み出しました。
浮世絵が社会に果たした役割
浮世絵には、娯楽だけでなく風俗・歴史・時事・災害など多様な題材が描かれています。流行のファッションなど最新の情報を提供する出版物、さらには社会的事件や政治ニュースを伝える報道メディアの役割も果たしました。
また、大ナマズが地震を引き起こすという民間伝承により描かれた「鯰(なまず)絵」は、地震の際のお守りとして重宝されました。ナマズを退治する絵によって地震から身を守ろうとする考えには、江戸っ子のユーモアも感じられます。社会においてさまざまな役割を担った浮世絵は、江戸時代の文化や精神性を映し出す鏡だと言えます。
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