江戸時代の「推し活」? 庶民に大人気だった僧侶の説法

宗教と娯楽の深い結びつき
江戸時代の浄土真宗では、僧侶が人々に教えを説く「説法(せっぽう)」が盛んに行われていました。人気の僧侶が来ると聞くと、人がわっと集まったといいます。話がうまく、例え話を巧みに使う僧侶は支持を集め、人々が「推し活」のように熱中することもありました。僧侶ではない一般の人が本などで独学し、説法のようなことをして数百人を集め、問題視された例もあります。
説法は芸能化し、落語などの起源の一つになったともいわれています。仏教の教えが芸能の題材になるなど、宗教と娯楽は意外なほど深く結びついていました。
書物からよみがえる僧侶の語り
説法の内容は、その場で弟子などが書き留めて、清書したものが書物として広まりました。寺に残されているだけでなく、信者が入手した例もあります。
近世宗教史の研究は、寺と信者の関係や寺院経営、政治との関わりを扱うものが多く、法話の内容を記録した書物を分析する研究は、まだそれほど多くはありません。法話に関する書物を研究することで、仏教の教えの広がりだけでなく、僧侶の語り口まで読み解けます。録音機器がなく、音の記録がない江戸時代の、語り口や例え話の使い方、人々が実際にどのように話を聞いていたのかを探ることができるのです。
宗教から見える庶民の暮らし
江戸時代は、一般の人々が家の墓を持つようになった時代でもあります。庶民が神社仏閣を巡る旅も広がり、現在につながるレジャーが生まれました。一方、庶民が自分の考えを書き残した史料はあまりありません。書物の持ち主の名前や書き込みといった痕跡から、当時の人々が宗教をどう受け止めていたのかを探る研究が進められています。
近年はデジタルアーカイブが普及し、遠方の資料にもアクセスしやすくなり、気づかれていなかった記述が見つかることも増えています。説法の書物を通して歴史をたどることで、江戸時代の人々の暮らしや、現在とのつながりが見えてきます。
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聖心女子大学 現代教養学部 史学科 講師 芹口 真結子 先生
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