DNAは諸刃の剣!? 細胞内に遺伝子を届ける電気の技術

DNAは諸刃の剣!? 細胞内に遺伝子を届ける電気の技術

一瞬の電圧で細胞膜に穴を開ける

私たちの体を作る細胞は細胞膜というバリアで覆われています。細胞膜は、細胞の内部を守り、必要な物質だけを取り込む役割を果たしています。薬剤やDNAといった物質は、ただ細胞のそばにあるだけでは、細胞の中に入っていきません。そこで利用されているのが「エレクトロポレーション」という技術です。細胞に高電圧をかけると、細胞膜に小さな穴が開きます。その穴を通して、遺伝子などを細胞の中へ送り込むのです。電圧をかけるのが非常に短い時間であれば、細胞膜の自己修復力により穴は自然にふさがるため、外から物質を取り込ませつつ、細胞を生かしたままにできるのです。

DNAは「諸刃の剣」

ところが、DNAのような大きな分子は、この穴をそのまま通り抜けて入るわけではないようです。最近の研究で、細胞がもともと持っている取り込み機構(エンドサイトーシス)が関わっていると考えられるようになってきました。
さらに、導入したいDNAそのものが細胞を傷つけてしまうことも発見されました。DNAが細胞の周囲にあると、膜に穴が開きやすくなる一方で、穴がふさがりにくくもなり、細胞の生存率が大きく下がります。遺伝子を届けるために必要なDNAが、同時に細胞を殺してしまうという、まさに「諸刃の剣」なのです。

「開けた後」に起きること

物質が細胞内に取り込まれる仕組みだけではなく、穴が開いた後に膜がどう修復されるのか、細胞の中身は漏れ出さないのかといった、その後のプロセスにも、まだ十分に研究の手が及んでいません。こうした未解明部分をひも解くことは、基礎科学としても応用の面でも大きな意味を持ちます。
それでも、エレクトロポレーションの応用はすでに広がりを見せています。ヨーロッパを中心に、抗がん剤と組み合わせて薬の効果を高めるがん治療といった医療への実用化が進んでいます。食品の非加熱殺菌など、身近な分野への展開も始まっており、新たな応用の可能性も期待されています。

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先生情報 / 大学情報

豊橋技術科学大学 工学部 応用化学・生命工学系 准教授 栗田 弘史 先生

豊橋技術科学大学 工学部 応用化学・生命工学系 准教授 栗田 弘史 先生

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細胞工学、分子生物学

メッセージ

私はもともとコンピュータや電気回路の仕組みに興味があり、電気の分野に進みました。化学や生物には全く関心がありませんでしたが、大学で生物を改めて学んでみて、生き物の体は人間が作ったどんな仕組みよりも巧妙にできていて、分厚い教科書をもってしてもまだ解明されていないことがあると知り、その奥深さに驚きました。今の私の研究もそこにつながっています。あなたも、好き嫌いや受験科目かどうかに関係なく幅広く学んでおくことが、将来思いがけない形で自分を助けてくれるはずです。

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