見た目からは想像つかない! ホヤの秘めたる可能性

見た目は貝のようだけど
海洋生物のホヤは、刺身などの食用にされる一方で、生命現象の研究における優れた実験生物でもあります。貝と誤解されやすい見た目ではあるものの、背骨の元となる「脊索」を持つホヤは、哺乳類に最も近い無脊椎動物だからです。世代時間が短く、飼育しやすいほか、体外受精をするので配偶子の顕微鏡観察も容易で、遺伝子組み換え技術が確立されているというメリットもあります。
受精は「鍵と鍵穴」で管理
ホヤは一個体が卵と精子の両方を持つ雌雄同体です。雌雄同体は柔軟な繁殖が可能ですが、同じ個体の卵と精子が自家受精すると遺伝的な多様性が失われかねません。ホヤは自家受精を回避するため、自分と他個体を識別する「自家不和合性」という仕組みを持っています。
ホヤの卵と精子が自他を識別する仕組みは長年の謎でしたが、最近の研究で、鍵と鍵穴の関係にある3つのタンパク質によって自他を識別していることが明らかになってきました。卵の膜上にある3つの鍵穴タンパク質のすべてに、精子の持つ3つの鍵が合致すると、自己と判断して精子の運動を止めるシグナルが伝わり、受精を阻止するという仕組みです。3つのタンパク質を組み合わせることで、少数のタンパク質のバリエーションで自己を認識しています。こうした受精の仕組みに関する基礎研究は、生殖医療にもつながると期待されています。
環境にやさしい材料としての可能性
ホヤにはもう1つ大きな特徴があります。それはホヤがセルロースを合成できる唯一の動物だということです。ホヤの殻は良質なセルロースで、紙やプラスチック複合材料、動物性を生かした生体材料など、さまざまな用途があります。しかし、現状では食用のマボヤの殻などはすべて焼却処分されています。
ホヤの殻を活用できれば、未利用資源の有効利用につながるだけでなく、炭素を固定する新しい「ブルーカーボン」として環境問題に役立つ可能性があります。ホヤの殻に貯蔵された炭素量などの調査が進められています。
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