言葉の発達を左右する、乳幼児の「指さし」

「指さし」は何のため?
乳幼児は1歳前後になると「指さし」を始めます。心の中に湧いている興味・疑問などを周りの養育者に指さしで伝えているのです。
同年代の子ども同士では指さしをすることはあまりなく、多くの場合、自分より知識のある養育者に対して指さしをします。つまり、乳幼児の指さしは「知りたい、教えて」という好奇心の発露であり、乳幼児が養育者を通して世界を知る機会でもあります。この行動に対して、周りの養育者が適切に応答することが、その子の知識を増やす上で大切です。指さしは「心の中を他者と共有したい」という欲求の発露でもあり、コミュニケーション能力、共感性の発達とも関わっています。
言葉の発達との関連
指さしは言葉を話すより先に現れます。最近の調査では、親や保育士など養育者が乳幼児と一緒に指さしながら応答すると、その子の指さしが増えることがわかりました。また、言葉の遅れがある子では指さしが少ないこともわかっています。
そこで、乳幼児の指さしから言葉の発達の遅れを予測する方法や、指さしを増やす働きかけで言葉の発達を促す方法が研究されています。乳幼児期の言葉の発達が遅れると、学童期の学習に悪影響を及ぼし、ひいては成人期の幸福感の減少や貧困につながります。乳幼児の指さしを促進することで言葉の遅れを予防できれば、貧困を減らせるかもしれません。
人を人たらしめる行為?
乳幼児は「いまここにないもの」にも指さしで興味を示します。例えば「昨日ここに帽子があった」というように、何もない場所を指さしたりするのです。人類は幻想や虚構、つまり心の中にだけあるものを共有することで絆をつくり、強固な社会を築くようになったと言われていますが、生まれて1年ほどでそうした人間の特徴が表れていると言えます。指さしは人間だけにある特徴です。人間に最も近い種であるチンパンジーにも指さしは見られません。
このように乳幼児の指さしの研究は、「人を人たらしめているものは何か」という問題を解明することにもつながる可能性があります。
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聖心女子大学 現代教養学部 心理学科 教授 岸本 健 先生
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発達心理学、動物行動学先生が目指すSDGs
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