なぜ『火垂るの墓』は戦争アニメ映画の代表作になった?

戦争アニメ映画をいくつ知ってる?
第二次世界大戦を扱う日本のアニメ映画は、1971年~2025年の間になんと70作品も作られています。『火垂るの墓』がブームの火付け役ともいわれますが、この作品は興行成績が振るわず、当初あまり注目されませんでした。ではなぜ、『火垂るの墓』は戦争アニメの金字塔として認識されているのでしょう。
なぜ『火垂るの墓』が代表作に?
実は高畑勲監督は、『火垂るの墓』を反戦映画にする意図はなく、極限の状況下で人々がどう相互に作用するかを描いたといいます。有名な『はだしのゲン』の陰には、同じ原爆を扱い、評価されながらも無名な『NAGASAKI 1945 アンゼラスの鐘』があります。また、戦争アニメは被害者意識を強調しているとの批判もありますが、加害性を描いた作品もあります。満州からの引き揚げ体験をもとにした『えっちゃんのせんそう』には、日本人警察官が中国の民間人に理由もなく暴力をふるう場面があります。70作品を比較すれば、戦争の描き方が多様であることがわかります。
では、その中でなぜ『火垂るの墓』だけが特別なのでしょうか。その鍵は日本テレビ「金曜ロードショー」にあります。興行的にいま一つだったジブリ初期作品は、1989年の『魔女の宅急便』公開時にマーケティング施策として放送されたのを機に同枠で繰り返し放送され、じわじわと人気を獲得します。『火垂るの墓』は大人気ジブリ作品の一つとして繰り返し放送されたからこそ、戦争アニメの代表作になったといえるでしょう。戦後80年の2025年には終戦記念日に放送されていることから、この作品がどういう位置づけにあるかは明白です。
代表作の功罪
「被害者意識」の批判には受け止めるべき一面がある一方で、これが戦後の平和教育に大きく貢献してきたことも無視できません。戦争の悲しくつらい体験は、戦争経験者が少なくなっているいまも反戦・平和の意識を育み、日本人の共通の「ナラティブ(語り)」として機能しているからです。
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新潟大学 経済科学部 学際日本学プログラム 助教 アルト ヨアヒム 先生
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