それって本当に当たり前? ことばの不思議を探る

ことばには目に見えない「構造」がある
「先生が生徒をグラウンドを走らせた」。この文は何かがおかしいですよね。何がおかしいかといえば、「を」が2つあることです。では、なぜ「を」が2つあるとおかしいのでしょうか。
私たちが無意識に使っていることばには目に見えない「構造」があり、様々な「操作」が行われています。ことばの構造を探り、何が起こっているのかを研究するのが言語学です。
母語と外国語との共通点・相違点を探る
母語は成長と共に自然に使えるようになるため、母語を意識する人は少ないでしょう。しかし外国語を学ぶ時には「なぜ?」と不思議に思うことが多いはずです。例えば、英語は「What did John buy?」は〇、「John bought what?」は×です。一方、日本語は「太郎は何を買ったの?」「何を太郎は買ったの?」のどちらも○です。英語のwh疑問文では疑問詞は必ず文頭に置かれますが、日本語では疑問詞は文頭になくても許されるのはなぜでしょうか。
この問題は、日本語だけ、あるいは英語だけを観察していたら生じ得ないものです。様々な言語を分析し比較することで、共通点や相違点が見えてきます。なぜ同じなのか、なぜ違うのかを考えながら、「ことばの能力」とは何かを明らかにしていきます。
「当たり前」に疑問を持つ
wh疑問文を学習した時、「元の位置にある疑問詞が文頭に『移動』する」と教わったと思います。受け身文でも目的語が主語に『移動』したと教わりましたよね。つまり、「移動前の文」と「移動後の文」が存在することになります。ではこれらはどこにどのように存在するのでしょうか。そしてなぜ移動が起きるのでしょうか。
このように言語学とは「当たり前」と思われている現象に「なぜ?」と疑問を投げかける学問です。ことばを使えるのは人間だけです。ことばの使い方ひとつで人の評価が変わることもあります。ことばは「心の窓」ともいえます。言語学者たちは、ことばの研究を通して「人間とは何か」を明らかにしたいと考えています。
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別府大学文学部 国際言語・文化学科 教授藤森 千博 先生
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