国際社会は無法地帯? 「不完全」な国際法の役割とは

国際法の役割
現在では、日々多くの飛行機が国境を越えて飛び回り、また多様な品物が輸出・輸入されたり、著作権が世界規模で保護されたりしています。こうしたことが可能なのは、国際法があるからです。代表的なところでは、民間航空に関する1944年シカゴ条約、関税及び貿易に関する1947年一般協定、文学的および美術的著作物の保護に関する1886年ベルヌ条約などがあり、ほかにも数多くの多数国間合意が結ばれています。「国際社会は無法地帯」と考える人もいますが、もちろん違います。こうした国際法の数々が、地球上のほぼすべての経済活動や社会生活を規律する役割を果たしているのです。
国際条約に罰則はない?
国内の法律であれば、違反者に罰金が科せられたり、逮捕されたりしますが、国際法に違反しても直接的な罰則はほとんどありません。しかし、国際社会が国際法の違反行為を軽視するわけではありません。例えば違反に対して国際社会から強い非難が向けられ、違反国に対して他国が「対抗措置」を講じることもできます。直接的な罰則がない国際法には、法として不完全な面があることは事実ですが、だからといってこれを無視できるものではないのです。
ロシアとウクライナのケース
2022年にロシアがウクライナに侵攻しました。ロシア政府は、ウクライナでの「特別作戦」は国際法の上では合法であるとし、国際法違反ではなく、国際法の解釈を巡る問題だと主張しました。一方、多くの国々はロシアの行為を国際法違反と見なし、経済制裁などの措置を講じました。そのため、ロシアが今後も「平気」でいられるわけではありません。
世界中の国々で民主化が進展していること、また科学技術が発展していることで、国際法のあり方はより複雑で、難しくなっています。しかし、人間が国境を越えて行き来し、モノやカネ、情報のやり取りを続ける限り、国際法の役割がなくなることはありません。不完全でありながらも、国際法は現代の世界に欠かせないのです。
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国際教養大学 国際教養学部 教授 豊田 哲也 先生
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