未来のまちはどう変わる? 人口減少時代のまちづくり

未来のまちはどう変わる? 人口減少時代のまちづくり

まちの仕組み

私たちの住む場所は、都市や山間部などさまざまです。その多くは、親や先祖が定住の地として家を建て、まちを形成してきました。また、まちには家だけでなく学校や商業施設、医療機関など、私たちの暮らしに欠かせないさまざまな施設も必要です。しかし、これらがそれぞれ勝手に場所を選んで建てられてしまうと、無秩序になってしまいます。そこで、日本では都市計画法に基づいてまちづくりが進められています。都市化を進める地域は市街化区域として指定され、さらにその中を住居系、商業系、工業系など13種類の用途地域に分類して土地の使い方が決められます。この仕組みにより、秩序ある、住みやすいまちが実現されているのです。

密度を下げる

現在、日本では人口減少が進み、過疎化や空き家の増加といった課題が深刻になっています。こうした状況では、従来の都市計画の考え方だけでは対応が難しくなっています。10年ほど前には、「縮小都市」という考え方のもとで、中心部に住まいや施設を集約してコンパクトなまちをつくろうという取り組みも行われましたが、大きな成果にはつながりませんでした。
そこで注目されているのが、「密度を下げる」という新たな視点です。これは、まちの形を変えるのではなく、空間にゆとりを持たせて、より快適な生活環境をつくるという考え方です。駅前のような便利な場所に人が集まるのは自然なことなので、すべての地域で均等に密度を下げるのではなく、人の動きや暮らし方をふまえて、地域ごとに最適な密度を見極めていくことをめざしています。

新しい都市のかたち

こうしたまちの変化は、悪いことばかりではありません。例えば、空き家が解体されてできた空き地が、かつてのように子どもたちの遊び場として使われることもあるでしょう。人口が減っていく時代だからこそ、都市計画には柔軟さが求められています。今あるまちを未来に向けてどのように守り、育てていくかが、これからのまちづくりの大きなテーマとなっているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

関西学院大学 建築学部 建築学科 教授 清水 陽子 先生

関西学院大学 建築学部 建築学科 教授 清水 陽子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

建築学(都市計画、地域計画)

メッセージ

興味を持ったことは、ネットで調べるだけでなく、関連した本を読むことをおすすめします。ネットで「知った」ことが、本により「理解する」に深まっていきます。また、まちや建築に興味があるなら、学校や自宅の最寄り駅の一つ手前で降りるなどして、知らないまちや普段行かない場所に足を運んでみてください。景色や匂い、音、食べ物などを五感で感じる体験は、きっとあなたの視野を広げてくれます。そういう経験を通して、あらためて自分のまちを見つめ直せば、新たな魅力や課題にも気づけるはずです。

関西学院大学に関心を持ったあなたは

スクールモットーである"Mastery for Service"は、「奉仕のための練達」と訳され、関西学院の人間として目指すべき姿を示しています。1889年にアメリカ人宣教師W.R.ランバスによって創立された関西学院は、このスクールモットーを体現する、世界市民を育むことを使命とし、現在、関西学院の3つのキャンパスでは、約2万人の学生が個性あふれる14学部で学んでいます。2021年4月からKSC(神戸三田キャンパス)は文系の総合政策学部と理系の理、工、生命環境、建築学部の5学部体制となりました。