AI時代も社会が求める哲学

広がる哲学対話
哲学カフェという対話の場が全国に広がっています。オンラインでも開催されており、少人数でゆったり語り合う内容は、人生への真摯(しんし)な問いかけや、暮らしの折々に感じる哲学的・倫理的な話題などです。ここは議論をまとめて何か結論を出すのではなく、あくまで対話し考える場です。
この広がりは2011年の東日本大震災が一つのきっかけだといわれます。災害を経験した人の、言葉にできないような思いを言葉にするために哲学カフェという集いの場が求められました。一人では思いを言葉にできないことに、社会が気づいたのです。
教育現場や医療現場にも
哲学や倫理学を社会につなげる取り組みも広がりつつあります。例えば、学校教育で子どもたちが哲学的な思考力を高める機会は、小学校などでも取り組まれるようになりました。また、医療分野では、医師や看護師などの従事者が生命倫理学を学ぶ機会が設けられています。治療法を選択する患者の自由を尊重する方針を基本にしつつ、治療法の選択に悩む患者への寄り添い方、感情の受け止め方などが変わってくると期待されています。
社会や価値観の変化を受け止める
さまざまな知的な作業はAIで代替できるようになるかもしれませんが、自分が納得できるまで考え、自分の責任で判断するということ、つまり、「哲学する」こと自体は、AIにも、他の誰にも代替できません。その際、西洋哲学史はもちろんですが、日本で哲学がどのように受容されてきたかを知ることは、考えるための言葉を獲得するために有益です。
西洋文化がどっと入ってきた明治のはじめに生まれ育った西田幾多郎は、西洋哲学をベースにしながらも日本古来の思想も踏まえて独自の思想を展開しました。哲学史を学ぶと、価値観が大きく異なる人に囲まれても、その考え方や社会だけが絶対ではないのだと理解できます。現代から見ると違和感がある思想も多いですが、その違和感こそ、現在を相対化して未来を見通す鍵なのです。
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