鉄道はビジネス? それとも「なくてはならない存在」?

鉄道経営の大変さ
あなたが普段乗っている電車やバスの路線は「もうかっている」と思いますか?
実は、現代の日本では、鉄道そのものの利益は決して大きくありません。東京の大手私鉄のなかには鉄道事業の利益は全体の2割程度で、駅ビルや商業施設、不動産事業の収益で支えられているケースもあります。
事業経営は、得意科目で苦手科目を補うテストと同じです。もうかる部門で、もうからない部門を支えます。しかし、人口減少が進む今、その仕組みが限界を迎えつつあります。つまり、鉄道は「乗客が多ければ安泰」という単純な話ではないのです。
もし地元の鉄道がなくなったら?
鉄道やバスの利用客の少ない地方では、赤字が続き減便や廃止になるケースが増えています。もし鉄道がなくなったらどうなるでしょうか。車を運転できない高齢者や児童・生徒は移動手段を失います。学校、買い物、病院への移動が難しくなる、つまり日常生活そのものが成り立たなくなります。
そこで国は2013年に交通政策基本法を制定し、鉄道会社ではなく沿線の市区町村(自治体)を支援する仕組みに転換しました。なぜなら、鉄道は単なるビジネスではなく、地域の日々の暮らしを支える基盤だからです。鉄道がなくなることは、「不便になる」だけでなく、「その町の魅力や将来性」にも影響するのです。
採算より「地域の未来」を考える
現在は「上下分離方式」という仕組みも広がっています。駅や線路(鉄橋、トンネル、信号機)などのインフラは自治体がしっかりメンテナンスを行い、列車運行は鉄道会社が担う役割分担です。これは、鉄道を「利益の有無だけで判断しない」という考え方です。
少子高齢化が進む日本で、地域公共交通は福祉政策であり、まちづくり政策であり、環境政策でもあります。大切なのは「黒字か赤字か」ではなく、「地域にとって必要かどうか」という視点です。鉄道の問題を考えることは、実は「これからの日本の地域社会をどうつくるか」を考えることなのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報

明治大学 商学部 商学科 准教授 恩田 睦 先生
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近現代交通史、鉄道史先生が目指すSDGs
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