国際交流が社会に新しい考えをもたらす? 埋もれた歴史を掘り起こす

忘れ去られていた近代日本の国際交流
日本史の教科書には、立派なヒゲを生やした男性政治家がたくさん登場します。これは政府が作成した公文書を中心に研究が進められてきたことが影響しています。こうした史料からは、国家と国家という大きな国際関係や、男性政治家たちが繰り広げる権力闘争の歴史ばかりが見えてきます。しかし、近代日本では男性政治家だけでなく、さまざまな人物たちによって国際交流が行われており、その中には女性リーダーも多く存在していました。国際交流に取り組んでいた人物に注目して、日本外交の新たな姿を明らかにしようと研究が進められています。
世界の第一線で平和運動を率いた日本人女性
河井道という女性は、世界各国の女性たちと手を取り合い、平和運動を率いた人物として知られています。河井は第一次世界大戦の被害を目の当たりにしたヨーロッパの女性知識人との交流を通して「戦争はヨーロッパだけではなく世界全体の問題だ」と考えるようになりました。そして戦争は非文明なものであることを主張し、日本でも少しずつ平和の重要さが広がっていきました。ひとりの女性による国際交流が新しい社会の流れを生み出した一例ですが、これまでの研究ではそもそも女性が研究対象となることがなく、河井の活躍はあまり表に出てきていませんでした。
ひとりひとりの国際交流が国際関係を動かす
河井が生まれた19世紀末の日本は、女性に教育は必要ないと考えられていた時代です。そんな時代になぜ国際交流を通した平和運動を率いることができたのか。それは、新渡戸稲造の教え子だったことが大きいと考えられています。新渡戸は日本に「国際社会」という言葉を持ち込んだ人物で、国際交流を通じた新しい社会を築こうとしていた人物でした。ひとりひとりの国際交流が、外交や国際交流の基盤にもなっています。国際関係論を学ぶためには、ジェンダーや職業の枠を取り払って、幅広い視点でひとりひとりの人物に焦点を当てて研究することも求められています。
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