「方言」という壁を越えて、円滑なコミュニケーションを実現する

「方言」という壁を越えて、円滑なコミュニケーションを実現する

「はよしねま」って?

「はよしねま」。これは「早くしなさい」という意味の福井弁です。意味を知らなければ、思わずドキッとしてしまうでしょう。方言とは、地域で育まれてきた文化や価値観の結晶です。地域に根ざした言葉が、コミュニティとしての一体感や連帯感を生み出しています。一方で、外から来た人には意味が理解できず、誤解や戸惑い、時には疎外感を覚えることもあるでしょう。ほかの地域から来た日本人はもちろん、外国人にとっては、コミュニケーションにおける大きな「壁」となってしまうこともあります。

外国人労働者にとっての方言

少子高齢化が進み人手不足が深刻な中、日本では都市部だけでなく地方でも、外国人労働者の需要がますます高まっています。例えば福井県では、外国人労働者がこの10年で倍増し、2024年10月末時点で過去最多となる2万人に上っています。特に工場や介護の現場では、今や欠かせない存在です。
しかし、こうした現場では、とりわけ特徴のある方言が多く使われるため、日本語を学んできた外国人でも「何を言っているのかわからない」と戸惑うことが少なくありません。中には、来日直前まで派遣先の地域に方言があることすら知らなかったという人もいます。方言という壁にぶつかり、自信を失って帰国を考える人もいるのが現実です。

方言が「架け橋」になる未来へ

一方で、方言を使うことで、周囲とのコミュニケーションが円滑になったという声もあります。福祉施設で働くインド人介護士は「方言を使い始めてから、利用者や同僚との距離が縮まった」と言います。こうした背景から、外国人向けの方言教材の開発が進められています。来日前に派遣先の方言に触れることができれば、不安は減り、自信を持って日本での生活をスタートできるはずです。方言を「壁」ではなく「架け橋」としてとらえることが、多様な人々が共に生きる社会への一歩になるかもしれません。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

福井大学 国際地域学部 国際地域学科 准教授 ヘネシー クリストファー 先生

福井大学 国際地域学部 国際地域学科 准教授 ヘネシー クリストファー 先生

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社会言語学

メッセージ

私が初めて日本語に触れたのは、大学3年生の時でした。専攻はプログラミングで、日本語は単に卒業に必要な科目の一つでした。しかし、英語とはまるで違うその言語に大きな衝撃を受けて「言語学」に転向し、神戸に留学しました。そこで「方言」と出会い、日本に暮らしながら研究しています。人生、何が起きるかわかりません。若い時ほど、チャンスはたくさんあります。視野を広げて、多くのことに挑戦してみてください。Keep your eyes open and take a chance!

福井大学に関心を持ったあなたは

本学は教育学部、医学部(医学科、看護学科)、工学部、国際地域学部の4学部からなる国立大学です。「創造力、実践力」をキーワードに、本学で学んだ学生が生涯にわたって創造力や指導力を発揮できるよう、学びの力となる学問の基礎及び方法の習得をめざします。先端研究に支えられた教育内容と、不断の省察による教育技術によって、学生がそれぞれの個性に目覚め、社会に貢献できる実践的知識と技術を習得して卒業する事を目標とします。就職率は複数学部を有する国立大学で18年連続ナンバー1の実績があります。(H19-R6年度)