限られた情報から謎を解き明かす、解剖学にも通じる化石研究

歯の化石からわかること
ヒトの体は、形を見るだけでもさまざまなことがわかります。その代表例が、化石の研究です。研究者たちは化石を発掘し、その化石から情報を読み取って人類の進化を明らかにしようとしています。
中でも発見されやすい化石は歯です。歯の形を分析すると、当時の食生活がある程度わかります。何を食べていたのかがわかれば、生息していた環境が推測できます。森林にいたのなら木の上で生活していたと考えられますし、サバンナにいたのなら木から降りて二足歩行で歩いていた可能性があると考えられます。歯という小さなパーツだけでも、これほど多くのことが見えてくるのです。
歯+αでさらに詳しく
さらに、歯以外の部位が化石として見つかると、より細かいことがわかってきます。例えば、サバンナで生活していたと考えられる時代の化石から、枝をつかむような形状になっている足のパーツが見つかりました。これにより、二足歩行をするようになってからもしばらくは森林で生活をしており、徐々に二足歩行での生活になっていったと考えられるようになりました。
人類の起源をたどる化石は、近年ますます古いものが発見されています。かつて、人類最古の化石は約400万年前のアウストラロピテクスでしたが、近年では約700~500万年前のサヘラントロプスやオロリン、アルディピテクスといった、より古い化石が次々に見つかり、私たちのルーツはさかのぼりました。さらに、約1000万年前の類人猿化石も発見され、人類とアフリカ類人猿が分かれる以前の姿を探るうえで重要な手がかりになっています。
化石研究の視点の応用
このように、わずかな手がかりから謎を解明し、物事の本質に迫るのが化石の研究です。これは、生物の形態や構造を調べ、仕組みを理解しようとする解剖学に通じるものがあります。また、化石研究の分野で培われてきた歯や骨に関する知識、そして限られた情報から状況を推測する考え方は、医療や生命科学など、体の仕組みへの理解を必要とするほかの分野にも応用されています。
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