誰にでも必要なコミュニケーションを科学する! SSTの可能性

精神科領域から生まれたSST
精神的な疾患や障害のある人たちが社会生活で必要なスキルを身につけるためのトレーニングを「SST(ソーシャルスキルトレーニング)」といいます。
1970年代にアメリカで開発され、80年代に日本に導入されたSSTは、当初は統合失調症などの精神疾患をもつ人を主な対象としていました。現在では、子どもたちの教育や、日常・職場での対人スキル向上にも役立てられています。特に現代は地域の人と関わる機会が減っており、トレーニングに需要があるのです。
自分を客観視する
SSTではコミュニケーションを、相手の状況を見て(受信)、どう話しかけるかを考え(処理)、実際に話しかける(送信)という3点のどこでつまずいているかを評価してアプローチします。精神疾患の人の場合は間違った学習や認知のゆがみを直すトレーニングですが、子どもの場合はそもそも経験していない、獲得していないスキルを学ぶ機会になるという違いがあります。
SSTの基本的な方法では、グループを作り、実際の場面を想定したロールプレイで会話を練習します。その後、見ていた人からよかった点を聞き、必要があれば改善点のアドバイスを受けてさらに練習します。「ここがダメ」という指摘は一切せず、いいところに注目する「希望志向」で、モチベーションを上げながらトレーニングを行います。例えば、ある中学生は「なぜかよくトラブルになる」と感じていましたが、SSTを通じて自分の言葉選びを客観視できるようになり、相手のことを考えて話すようになりました。
学ぶ機会を増やす
WHOは21世紀に必要な力としてソーシャルスキルを挙げています。SSTは、今や誰にとっても有用なものといえます。しかし、日本には30年以上の実践の歴史がありながらも、指導者の職人技に頼っているところがあり、研究的なエビデンスが不足しています。今後SSTのパッケージ化を進めてエビデンスを確立することで、誰もがSSTを受けられる環境が実現できるでしょう。
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岩手県立大学 看護学部 准教授 佐藤 史教 先生
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