循環型社会実現のカギを握る、メタン/メタノールを食べる微生物

葉の表面にいる微生物
メタンは二酸化炭素よりも強力な温室効果ガスです。その発生源として水田や牛の「げっぷ」などが知られていますが、実は植物からも膨大な量のメタンが発生しています。もっとも、植物から発生するメタンの一部は大気中に放出されることはなく、葉の表面に生息する微生物によって消費されています。
葉面には、メタンやメタノールなど炭素(C)が1個の化合物をえさとして利用する「C1微生物」が多く生息しているのです。植物が生産するメタンやメタノールを消費して、植物に必要な二酸化炭素のほか、植物に有用な物質を産出して共生関係を築いています。
環境にやさしい活用法
C1微生物の活用は、カーボンニュートラルな循環型社会に貢献できるものとして期待されます。その1つは農作物の増収です。イネの葉にC1微生物を散布すると、米の収量が15%増加する成果が実験ではすでに出ています。
もう1つはバイオ生産への応用です。様々な化合物の生産に微生物を利用すれば化石資源の使用を削減できますが、多くの微生物は糖分をえさとするため、人間の食料と競合してしまいます。C1微生物なら競合は起こらず、さらに二酸化炭素と水素からメタンを作るメタネーションの技術を使えば、天然ガス由来のメタンも必要なくなります。また、メタノールからタンパク質を作る能力に優れた酵母も見つかっており、同じ真核生物であるヒト由来の医療用タンパク質の製造などへの応用が可能です。
そもそもC1微生物とは?
葉の表面に微生物がいることが知られるようになったのは比較的最近です。日照や乾燥、メタノール濃度の変動などがある葉面環境で、C1微生物が生きていくためにどのような代謝機能を持っているのか研究が進められており、環境ストレスへの適応メカニズムなどについて明らかになってきました。また、遺伝子操作と実際のC1微生物の動きから、メタノールを感知する遺伝子や葉面での運動に関する遺伝子も同定されつつあります。
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