都市と地方、どちらがより幸せ?

都市と地方、どちらがより幸せ?

何が人を幸せにするか

お金やプレゼントをもらった、テストの結果が良かった、好きな人と両思いになれたなど、幸せを感じる場面はいろいろでしょう。経済学や心理学の研究者たちは、「人は所得の高さだけでは幸せになれない」と結論づけています。幸福感には、経済的な豊かさだけではなく、家族・友人・恋人との関係や健康状態、パーソナリティ(性格)など多くの要因が関わっています。

環境が幸福感を変える

幸福感はたしかに、その人の感じ方や考え方を表すパーソナリティと深く関わっています。しかし、明るい人が必ずしも幸せになれるわけでもないですし、くよくよしがちな人が必ずしも幸せになれないわけでもありません。
社会生態心理学では、「幸福感はその人が置かれた自然環境や社会環境によって変化する」と考えます。パーソナリティだけではなく、周りの環境を含めた広い視野をもつことで、人が幸せになったり不幸せになったりするプロセスを解き明かせるのです。

日本と欧米で真逆の結果に

欧米では、地方で暮らす人が、都市部で暮らす人よりも幸福感を得やすいことがわかっています。しかし、日本のさまざまな年齢・性別・地域を対象に調査したところ、都市部で暮らす人は、地方で暮らす人よりも幸福感を得やすいことがわかりました。都市部で暮らしていると、話題や価値観が合う相手と付き合ってそうではない相手とは距離を取ることを比較的自由にできるため、幸せになりやすいと考えられます。今後は、「どうすれば地方で暮らす人が幸福感を得られるのか」「どうなると都市部で暮らす人が幸福感を得られないのか」といった視点から、分析を重ねる必要があります。
国連は、2050年に世界人口の68%が都市部に住むと予測しています。居住環境に関係なく、より多くの人が幸せに生きられる可能性を探る研究が期待されています。

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先生情報 / 大学情報

久留米大学 文学部 心理学科 准教授 浅野 良輔 先生

久留米大学 文学部 心理学科 准教授 浅野 良輔 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

社会心理学、パーソナリティ心理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたが進路について迷っているとすれば、それは「自分の道を自分で選べる」という幸せな環境にいる証拠です。自分がこれから何を学びたいのか、調べたり考えたりすることを面倒くさがらないでください。やってみると、意外なことに興味や関心が湧くかもしれません。
自立して生きていくために専門性の高い資格や技術を身に付けることは大切ですが、それらは人間力がなければ十分に発揮されません。ものすごい速さで変化する社会に圧倒されることもあるかもしれませんが、苦労や失敗を糧としながら成長できる大人になってください。

久留米大学に関心を持ったあなたは

歴史と伝統を積み重ねた久留米大学には、文学部・人間健康学部・法学部・経済学部・商学部・医学部の6学部14学科、大学院4研究科そして18の研究所・センターなどがあります。「個性尊重、資格取得、地域貢献、国際感覚の育成、高度情報化への対応」を重視し、多くの優秀な教授陣が学生一人ひとりの能力を伸ばしながら、社会への適応力を育み、ゼミナールを中心とした授業で、教員と学生の触れ合いを大切にしています。文系・医系の両キャンパスに新たに教育・研究棟が完成し教育環境もさらに充実しました。