世界初の大気アシストロケット その開発に向けた燃焼器の研究

世界初の大気アシストロケット
民間企業でも独自にロケットの打ち上げが行われるなど、今、宇宙開発産業は活気にあふれています。日本でも、宇宙航空研究開発機構(JAXA)を中心にいくつもの大学や研究機関が集まって、さまざまな新しいロケットの開発が進んでいます。
その中の一つが、「大気アシストロケット」です。空気のない宇宙で航行するため、従来の日本のロケットは液体水素と液体酸素を機体に積んでいます。それを、宇宙に出るまでの大気圏内および着陸時には大気中の酸素を利用して燃焼させる「エアターボエンジン」を使おうという取り組みです。通常ロケットには液体水素の約6倍もの重さの液体酸素を積んでおり、大気圏内用の液体酸素をなくすだけでもかなりの重量削減になるのです。
まだ世にないエンジン
エアターボエンジンにはさまざまな機構・部品が使われていますが、重要な燃焼現象を担う「燃焼器」に注目が集まっています。世界初でまだ世の中にないものなので、燃焼に必要な要素を一つ一つ手探りで開発している段階です。まずは噴射口の研究から始められています。外から取り込んだ大気と、タービンを駆動した後の高温の水素と水蒸気の混合燃料をどのように混ぜ合わせて噴射させたら効率よく推進力を得られるのか、いくつもの形の噴射口を作り、実験を繰り返しながら仕様を決めていきます。
従来のエンジンの改良も必要
従来のロケットエンジンの燃焼器を改良する研究も行われています。エレメントと呼ばれる二重の筒に入った酸素と水素がどのように流動、燃焼するか、基礎的な現象を解明しながら、改良が進められています。
さらに、「燃焼振動」を防ぐ機構の研究も行われています。燃焼振動が発生すると、圧力変動で機器が溶けたり、破損することで、ひどい場合には爆発するため、変動エネルギーを吸収する機構が必要なのです。燃焼振動は、エンジンごとに条件が異なり、それに応じた機構が必要になります。この機構の研究は大気アシストロケットにも応用される可能性がある重要な研究となっています。
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