働くことで希望が実現する生き方へ 精神看護の就労支援

精神疾患をもつ人への就労支援
精神疾患をもつ人にとって、仕事を続けていくことは簡単ではありません。統合失調症は100人に1人が発症する病気ですが、人目が気になりやすいという症状があり、人と接するのが怖くなってしまう人もいます。薬の副作用にも悩まされ、社会的偏見から困難にぶつかることも少なくありません。そのため仕事に就いても、短期間で辞めてしまう人が多いのです。病院から地域へと医療の場が転換している今、働きたいという意志のある患者が、前向きに自分らしく働き続けられるような支援が求められています。
希望が実現する生き方
複数の患者にインタビューをして「働く動機」を追究した研究があります。働き続けてきたある統合失調症をもつ人は、「病気の自分を支えてくれた両親の老後を支えるために、貯金をしている」と話しました。両親への恩返しという強い動機が、継続就労を実現させたのです。就労と生活とが調和した状態、具体的には「働くことにより、希望を実現させる生き方を追求できる状態」を築くことは、病気と向き合いながらの就労を後押しすることがわかりました。また、仕事で誰かに感謝された体験があったから、失敗しても「自分も誰かの役に立てている」と心を強く保てるなど、就労と生活とを調和させる生き方のコツをつかむことも、就労の支えになることがわかりました。
看護モデルの開発
こうした研究を元に、その人の体調や精神状態に合わせてどのような支援をするかという看護の実践モデルがつくられました。患者一人一人が自分の心と向き合いながら、就労と生活との調和を築いていきます。看護師はまずその人が働いてかなえたいこと、生活で大切にしたいことを聴き、希望実現へのイメージを描くことを支援します。失敗して自信をなくしているときには、アイデンティティのゆらぎを抑えるような支援も必要です。モデルの活用により、デイケアなどの地域の施設で、看護師による就労支援が広がっていくことが期待されます。
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