2000年の大移動! 地球全体を巡る海洋大循環の謎に迫る

2000年の大移動! 地球全体を巡る海洋大循環の謎に迫る

地球を巡る深層水の役割

海水は約2000年をかけて地球全体を巡っていることを知っていますか。海水は北極や南極で冷やされると、重くなって海底に沈み込みます。冷たい海水は移動しながらだんだんと温められ、軽くなって太平洋など温暖な海で浮上します。そしてまた高緯度の地域に移動して冷やされ、沈み込みます。この現象は「深層海洋大循環」と呼ばれており、地球の温和な気候を維持しています。海水は水そのものだけでなく、大量の熱や物質も運んでいるからです。

海水をかき混ぜる

深層海洋大循環の大まかな経路はわかっているものの、熱の伝わり方には不明な点が多く残されています。特に太陽光の熱を海面から海底に伝える上で大きな役割を果たしている「乱流混合」の実態を解き明かそうと研究が進められています。乱流混合とは、性質の違う2つの流体が渦を巻いて混ざる現象です。海底の冷たい水も、海面の暖かい水との乱流混合によって温まって浮上していきます。深海の乱流混合を促進する最大の要因が、潮の満ち引きである「潮汐(ちょうせき)」です。

乱流の強さを正確に知るには

潮汐は基本的に半日周期で起きますが、場所によっては1日に1回だけ見られる場合もあります。この「日周期」の潮汐も乱流混合に貢献していることがわかっているものの、その影響は過小評価されてきました。日周期の特徴が見逃され、「半日周期の潮汐と同じ性質を持っている」という仮定で乱流混合のシミュレーションが行われてきたからです。しかし研究により、地球の自転のため「海岸に沿って一方向にだけ伝わる」という日周期の潮汐ならではの波の性質が明らかになってきました。従来のシミュレーションでは自由に伝わる波だけが対象になっていましたが、これでは海岸に沿って伝わる日周期の潮汐は捉えきれません。このような波を捉える新たな理論を作り、見落とされていた潮汐も含めて解析し直すことで、乱流混合の実態を正確に把握できると期待されています。今後も深層海洋大循環のメカニズムにより深く迫ろうと、研究は続きます。

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先生情報 / 大学情報

東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋環境科学科 准教授 田中 祐希 先生

東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋環境科学科 准教授 田中 祐希 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

海洋物理学、地球流体力学、沿岸海洋学

先生が目指すSDGs

メッセージ

自分なりの問題意識を持ち、物事を深く理解する姿勢を大切にしてほしいです。私は海の内部で発生する「波」の振る舞いを研究しています。このような基礎的な研究では、疑問を掘り下げて問題を設定し、それに対するアプローチを粘り強く、柔軟に探ることが求められます。うまくいかないことも多いですが、その過程でしか得られない発見もあり、決して無駄ではありません。そして、試行錯誤の末に自然界の姿が垣間見えたと感じられたときは嬉しいものです。効率重視の現代でも、自分の頭で考え抜くことが輝きを放つ場面はあるのです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

東京海洋大学に関心を持ったあなたは

東京海洋大学は、全国で唯一の海洋にかかわる専門大学です。2大学の統合により新しい学問領域を広げ、海を中心とした最先端の研究を行っています。海洋の活用・保全に係る科学技術の向上に資するため、海洋を巡る理学的・工学的・農学的・社会科学的・人文科学的諸科学を教授するとともに、これらに係わる諸技術の開発に必要な基礎的・応用的教育研究を行うことを理念に掲げています。