大気中の微粒子と健康との「関係」が見えてくる

大気中の微粒子と健康との「関係」が見えてくる

アジアで続く大気汚染

人間の健康は環境からの影響を受けます。健康に被害を与える要因に、大気中の微粒子があります。日本では近年、環境基準が定まったこともあり、大気汚染は改善され、PM2.5(微小粒子状物質)の濃度が下がってきています。しかしアジア各地では、経済発展の副産物としてまだまだ大気汚染は深刻です。インドネシアでは泥炭土壌のため山林火災が起きやすく、煙の被害が多いエリアもあります。世界は海も空もつながっています。大陸の奥地から風に乗って日本へ飛来する黄砂は「越境大気汚染」と呼ばれ、都市部の汚染された大気と混じることで日本人の健康にも影響を及ぼしています。

微粒子による健康への影響

大気中の微粒子による健康被害の主な症状は呼吸器疾患が多かったのですが、研究によってそれだけではないことがわかってきました。循環器疾患、心臓病、脳卒中などのきっかけになるほか、長期的には動脈硬化を起こすという研究結果もあります。微粒子を吸い込むと肺から血液に入って全身を巡るため、血管にも影響を与えるというわけです。さらに、認知機能への影響といった、一見関係なさそうな分野でも注目されるようになっています。

医学とさまざまな学問との共同研究

医学的には個人の健康被害を調査研究することになりますが、そのためには大気汚染と患者数などのデータを収集しなければなりません。大気汚染の健康への影響を調べるには、直接関わる医学だけでなく、気象学、観測するための工学といった多様な分野の研究者が共同で研究し、データの測定や解析を進めていく必要があります。また、大気中の微粒子には、PM2.5よりもさらに小さい「超微小粒子」も存在しており、北米やヨーロッパでは健康への影響が研究されていますが、日本ではようやく測定が始まった段階です。こうした研究によって健康と大きな関わりがあることが科学的に検証されて初めて、改善するための基準や制度ができるのです。

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先生情報 / 大学情報

北海道大学 医学研究院  教授 上田 佳代 先生

北海道大学 医学研究院 教授 上田 佳代 先生

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環境疫学、衛生学、公衆衛生学

メッセージ

私は医学部を卒業後、臨床医として10年働いてから研究の道に入りました。その後も環境学・工学分野に寄り道して、多くの分野にまたがる学際的かつ国際的な研究-大気環境、特に大気中粒子の健康影響-に取り組んでいます。大気汚染の原因となる微粒子は、気候変動とその健康影響にも密接にかかわり、その研究は日本だけでなく世界的にも重要でやりがいのあるテーマです。目的地に向かってまっしぐらに進むことも重要ですが、その時々の選択をして寄り道をするのも思いもかけない発見があり結果的には回り道ではないと考えています。

北海道大学に関心を持ったあなたは

北海道大学は、学士号を授与する日本最初の大学である札幌農学校として1876年に創設されました。初代教頭のクラーク博士が札幌を去る際に学生に残した、「Boys, be ambitious!」は、日本の若者によく知られた言葉で本学のモットーでもあります。また、140余年の歴史の中で教育研究の理念として、「フロンティア精神」、「国際性の涵養」、「全人教育」、「実学の重視」を掲げ、現在、国際的な教育研究の拠点を目指して教職員・学生が一丸となって努力しています。