講義No.15779 社会学 数学

数学の力で社会を見る 台湾の人々のアイデンティティ認識とは?

数学の力で社会を見る 台湾の人々のアイデンティティ認識とは?

国や民族のアイデンティティ

自分は特定の国や民族に所属している、という意識を「ナショナルアイデンティティ」や「エスニックアイデンティティ」といいます。こうした意識について、台湾を例に見てみましょう。
台湾は複数の民族が移住してきた歴史を持ち、日本や中国などから文化的・政治的影響を受けてきました。現在でも中国の福建省から移住したミン南人、独自の言葉や文化を持つ客家(ハッカ)人、戦後に移住した外省人など、歴史も思想も違う人々がともに暮らしています。そのため「台湾人」というアイデンティティは複雑な構造で成り立っている、と考えられてきました。

アイデンティティを可視化

アイデンティティは目に見えませんが、数学の力を使えば実態を把握できます。台湾に住む1000人を対象にアンケート調査を行い、その結果をファジィ集合という手法で分析した研究があります。高校でも習う通常の「集合」では、Aというグループに100%入っているかいないか、という二択を考えます。一方ファジィ集合では、Aに少しは入っている、のような曖昧な回答も分析可能です。そのためアンケートの回答項目は「そう思う」から「まったくそう思わない」までの11段階で用意されました。その上で、「あなた(やあなたの知り合い)は○○人(台湾の主な民族名)だと思いますか?」という設問に答えてもらいます。

「台湾人」の実態は?

分析の結果、「私は台湾人だと強く思う」と、ほとんどの人が答えたことがわかりました。また、台湾人というアイデンティティが、ほかのエスニックアイデンティティをサブカテゴリーとして許容していることも明らかになりました。例えば「私は台湾人であるが、ミン南人でもある」のように、複数のアイデンティティを持つ人が多いのです。台湾人とは特定の民族だけを指しているわけではなく、さまざまなサブカテゴリーを内包して成り立つ、重層的なアイデンティティだといえます。この事例のように、社会の状況を数学の力で分析する分野を「数理社会学」といいます。

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先生情報 / 大学情報

関西学院大学 社会学部 社会学専攻 教授 石田 淳 先生

関西学院大学 社会学部 社会学専攻 教授 石田 淳 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

数理社会学

メッセージ

私はもともと文系で、数学は大学院の博士課程になってから学び直しました。数理モデルを作るのは、まるでブロック遊びをしているかのようで、自由な発想で考えを形にしていく過程に面白さを感じますし、自分で何かを創り上げる面白さをダイレクトに味わえます。だからこそ最初から「苦手だから」と数学を避けず、少しでも気になったら試してほしいです。数理社会学ではそれほど難しい数学は使いません。むしろモデルを作るための発想力が大切です。あなたもこの学問に挑戦してみませんか。

関西学院大学に関心を持ったあなたは

スクールモットーである"Mastery for Service"は、「奉仕のための練達」と訳され、関西学院の人間として目指すべき姿を示しています。1889年にアメリカ人宣教師W.R.ランバスによって創立された関西学院は、このスクールモットーを体現する、世界市民を育むことを使命とし、現在、関西学院の3つのキャンパスでは、約2万人の学生が個性あふれる14学部で学んでいます。2021年4月からKSC(神戸三田キャンパス)は文系の総合政策学部と理系の理、工、生命環境、建築学部の5学部体制となりました。