数学の力で社会を見る 台湾の人々のアイデンティティ認識とは?

国や民族のアイデンティティ
自分は特定の国や民族に所属している、という意識を「ナショナルアイデンティティ」や「エスニックアイデンティティ」といいます。こうした意識について、台湾を例に見てみましょう。
台湾は複数の民族が移住してきた歴史を持ち、日本や中国などから文化的・政治的影響を受けてきました。現在でも中国の福建省から移住したミン南人、独自の言葉や文化を持つ客家(ハッカ)人、戦後に移住した外省人など、歴史も思想も違う人々がともに暮らしています。そのため「台湾人」というアイデンティティは複雑な構造で成り立っている、と考えられてきました。
アイデンティティを可視化
アイデンティティは目に見えませんが、数学の力を使えば実態を把握できます。台湾に住む1000人を対象にアンケート調査を行い、その結果をファジィ集合という手法で分析した研究があります。高校でも習う通常の「集合」では、Aというグループに100%入っているかいないか、という二択を考えます。一方ファジィ集合では、Aに少しは入っている、のような曖昧な回答も分析可能です。そのためアンケートの回答項目は「そう思う」から「まったくそう思わない」までの11段階で用意されました。その上で、「あなた(やあなたの知り合い)は○○人(台湾の主な民族名)だと思いますか?」という設問に答えてもらいます。
「台湾人」の実態は?
分析の結果、「私は台湾人だと強く思う」と、ほとんどの人が答えたことがわかりました。また、台湾人というアイデンティティが、ほかのエスニックアイデンティティをサブカテゴリーとして許容していることも明らかになりました。例えば「私は台湾人であるが、ミン南人でもある」のように、複数のアイデンティティを持つ人が多いのです。台湾人とは特定の民族だけを指しているわけではなく、さまざまなサブカテゴリーを内包して成り立つ、重層的なアイデンティティだといえます。この事例のように、社会の状況を数学の力で分析する分野を「数理社会学」といいます。
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