メディアとしてのゲームから見える社会

メディアとしてのゲームから見える社会

多元化する現代のメディアとゲーム

現代のメディア環境は、かつてないほど多元化しています。テレビや新聞といったマスメディアだけでなく、インターネットやスマートフォン、SNSが普及したことで、情報の受け手と発信者との境界があいまいになりました。
さらに、「ゲーム」をメディアとしてとらえる視点もあります。ゲームが単なる娯楽ではなく、人と人とを結びつけるメディア(媒介)として機能するのです。これはデジタルかアナログか、オンラインかオフラインかという区分だけではとらえきれない、複合的なメディアだと言えます。

インターネットがない時代のゲーム

ゲームの歴史を分析して、メディアのありかたを考察した研究があります。
1980年代終わりから1990年代にかけて行われた「メイルゲーム」は、郵便を用いたロールプレイングゲームです。ゲームの参加者は自分のキャラクターを設定し、月に1度、キャラクターが何をするかをゲームの主催者に郵送します。主催者は参加者たちからの手紙の内容をもとに物語を進め、その内容を参加者たちへ返送するのです。こうした1カ月1ターンを繰り返し、例えば1年で完結するわけです。
このようなゲームは、インターネットが普及する現代と比較すると不便とも言える仕組みです。しかしその制約があるからこそ、参加者たちは想像力を働かせて、お互いの存在を意識しながら物語を共有していました。そこには現代のオンラインに通ずるような、とはいえ独特なコミュニケーションの形があったのです。

メディア考古学から見えるものは

このように、かつて存在したメディアの実践を整理して分析することで、その時代の社会関係や価値観を読み解こうとするのが「メディア考古学」です。
前述のメイルゲームの事例からは、即時性や効率性を当然とする現代の感覚が相対化されます。同時に、ゲームがコミュニティを形成して、人々を結びつける力を持つことも浮かび上がります。
メディアは単なる娯楽ではなく、時代を映し出し、社会関係を作り出すものだと言えるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

関西学院大学 社会学部 メディア学専攻 准教授 松井 広志 先生

関西学院大学 社会学部 メディア学専攻 准教授 松井 広志 先生

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メディア論、社会学、ゲーム研究

メッセージ

今、自分が思うようにいかないことがあっても、その経験は決して無駄にはなりません。私自身は高校時代に入院して、高校を卒業するのにほかの人より1年長くかかりました。しかしその期間はとても時間があったので、本を読んだりゲームをしたりして、さまざまなことに触れることができました。
当時は遠回りに感じた時間が、今の研究の土台になっています。どんな経験でも、突き詰めれば自分だけの強みになります。自分が興味のあることを大切にして、知識や経験を積み重ねていきましょう。

関西学院大学に関心を持ったあなたは

スクールモットーである"Mastery for Service"は、「奉仕のための練達」と訳され、関西学院の人間として目指すべき姿を示しています。1889年にアメリカ人宣教師W.R.ランバスによって創立された関西学院は、このスクールモットーを体現する、世界市民を育むことを使命とし、現在、関西学院の3つのキャンパスでは、約2万人の学生が個性あふれる14学部で学んでいます。2021年4月からKSC(神戸三田キャンパス)は文系の総合政策学部と理系の理、工、生命環境、建築学部の5学部体制となりました。