「それって本当?」から始まる認知心理学

「それって本当?」から始まる認知心理学

「正しい」という確信

私たちは自分の目で見たことや、それを根拠にした判断を「正しい」と信じて疑いません。しかし、認知心理学の研究では、人間の認識がいかに曖昧かが示されています。例えば、目撃者が強い確信を持って「この人が犯人だ」と証言しても、その記憶が誤りであるケースがあり、無実の人が有罪にされてしまうことがあります。人の認識の不正確さによって悲劇が生じることもあるのです。認知心理学は、こうした認識の仕組みを実験で解き明かします。世の中で「当たり前」とされている常識も、一度立ち止まって「本当にそうなのか?」と検証するのです。

「化粧」と「笑顔」の実験

こうした「当たり前」を、データで検証した研究があります。女性の「化粧義務」をめぐる実験です。「女性の身だしなみ」として化粧は本当に必要なのかを確かめるため、カフェ店員の接客動画を用いた実験が行われました。化粧の有無と、表情(笑顔か無表情か)を組み合わせた4つのパターンで評価を調べたところ、接客の評価を左右していたのは化粧ではなく「笑顔」でした。「接客を仕事にする女性が化粧をしていないのは失礼」という社会の前提は、実際の評価には直結しておらず、そもそも、化粧しているかどうかにすら気づかない人の方が多かったのです。常識だと思われてきたルールが、実験によって揺さぶられます。感覚ではなくデータで確かめるところに、心理学の価値があります。

「常識」を変えて弱き者を救う

冤罪を減らすための記憶研究も、化粧義務に疑問をなげかける実験も、弱き者の苦しみを減らすための研究です。無実を信じてもらえず囚われの身となる人、上司などから化粧を強要される人、そういった弱い立場にある人々が救われるよう、また、寛容な社会になるように、これらの研究結果を、世間に訴えかけていきます。心理学は人の意識を研究し、そして変えていくためのツールになるのです。

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先生情報 / 大学情報

神戸女学院大学 心理学部 心理学科 教授 矢野 円郁 先生

神戸女学院大学 心理学部 心理学科 教授 矢野 円郁 先生

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認知心理学、実験心理学、社会学

先生が目指すSDGs

メッセージ

受験勉強で、ただ繰り返す暗記はなぜ定着しにくいのでしょうか。私は記憶のメカニズムを研究してきましたが、情報の意味や背景を考える「ひと工夫」こそが、記憶成績に重要な要素だとわかってきました。ただ「覚えよう」とするのをやめて、「理解」から始めてみましょう。「理解」したことは自ずと覚えているものです。そして、「わかる」とますます面白くなります。何が自分にとって面白いと思えるかはやってみないとわかりません。受験勉強を、ただ苦痛なものと思わず、ぜひ「わかる」楽しみを味わいながら取り組んでみてください。

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創立150年を迎える神戸女学院大学。徹底した少人数教育で、授業の7割が20人以下で行われ、学生と教員の距離が近く双方向で質問のしやすい環境が特長です。また、リベラルアーツのカリキュラムで実技を含む他学科の専門分野の科目を多く履修することができ、自由な学びが展開できます。「就職に強い!神戸女学院」として、人気の航空業界をはじめ、マスコミ、製造、各業界に多くの卒業生を輩出しています。2024年には国際学部と心理学部が開設され、2025年には生命環境学部が新しくSTART!