汚れた手を「土で洗う」? 土壌のすごい機能!

汚れた手を「土で洗う」? 土壌のすごい機能!

そもそも土壌とは何だろう?

「地球に土壌があるように、月にも土壌があるか?」その問いに土壌学では「NO」と考える研究者が多いと思います。月の表面に鉱物の粒子はありますが、有機物が存在しない月面では土壌とは呼べません。
一般的に、土壌の生成を考えるとき、岩石が物理的な風化で細かくなり、そこにコケなどが入って化学的風化が進み、さらに大きな植物が入って生成されていくのが「土壌」です。岩石だけだと土壌の生成にはとても永い時間が必要ですが、細かな火山灰が降り積もる場所では、生成が早く進みます。

リン酸があふれている農地

火山が多い日本では、農地に限っていえば4割が火山灰由来の土壌です。農作物を作るには一般に肥料を使いますが、火山灰には肥料のリン酸を吸着してしまう性質があるため、より多く施す必要があり、日本は海外から大量のリン酸を輸入してきました。ところがある調査では、一部の農地ではリン酸が飽和状態にあることが指摘されています。これからはリン酸の輸入に頼るのではなく、今ある土壌中のリン酸を活用することが、持続可能な農業のために必要となるでしょう。

土壌の活用で地球の課題を解決

また火山灰土壌がリン酸を吸着するように、土壌には「浄化」する機能があります。化学物質が手に付着した場合、水で洗い流すよりも、土で洗ったほうが効果的な場合もあります。イスラム教では、汚れた場所はまず泥水で洗うという規律があるそうです。2011年に起きた原子力発電所の事故でも、放出された放射性セシウムという汚染物質を火山灰由来の黒ボク土が吸着していたことがわかっています。
土壌には、汚染物質などの「浄化」、農作物などの「生産」、水資源の「保水」など、さまざまな機能があります。多くの生命を育み、自然環境を調整する土壌の分野は、さまざまな地球の課題を解決できる可能性を秘めているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

茨城大学 農学部 食生命科学科 准教授 坂上 伸生 先生

茨城大学 農学部 食生命科学科 准教授 坂上 伸生 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

土壌学、環境学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校の教科をしっかりと勉強していくことももちろんですが、現実の自然現象や社会現象に興味関心を持って、背景にある原理や法則を学び取ってほしいです。さまざまな事象に触れて、多様な価値観や考え方を知り、それを許容しながら自分でもいろいろなことを思考していくことが大切です。ゲームなどのコンテンツを消費するのも楽しいですが、いろいろな角度で物事を考える体験は、将来、きっと役に立ちます。そのような体験を重ねることで、未来がすごく広がりますので、それを楽しみに大学に来てください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

茨城大学に関心を持ったあなたは

茨城大学は、人文社会科、教育、理、工、農、地域未来共創学環の5学部1学環からなる国立の総合大学です。本学の特色である「プラスIプログラム」は、どの学部・学環でも「サステイナビリティ学」「数理・データサイエンス・AI」「アントレプレナーシップ」「グローバルコミュニケーション」といった多様なプログラムから選んで「もうひとつの力」を身に付けられます。また3年生の秋シーズンには「iOPクォーター」があります。必修科目を原則的に開講せず、海外研修やインターンシップなどの学外活動に取り組むことができます。