ゲーテの詩「野ばら」を味わってみよう

ゲーテの詩「野ばら」を味わってみよう

初恋の苦い思い出

「わらべは見たり 野なかのばら 清らに咲ける その色めでつ」
音楽の教科書でもよく取り上げられる歌曲「野ばら」の歌詞は、もともとドイツの文豪ゲーテが18世紀に自分の初恋をモチーフに書いた詩です。わらべ(少年)が野ばらに魅せられたように、大学生のゲーテは村娘に心を奪われ、二人は恋人同士になります。わらべが野ばらを折ったように、恋愛に束縛されるのを嫌ったゲーテは彼女を捨ててしまいます。そのときに感じた罪の意識がこの詩にこめられているといわれています。現代と同じく近代ドイツの詩も恋をテーマにしたものは多く、ハイネも「詩人の恋」などの作品を残しています。

詩の生命は音楽性にあり

詩の生命は、その意味よりも音としての美しさ、口ずさんだときの快さにあります。ドイツ語はアクセントがある音とない音を「強弱・強弱」「強弱弱・強弱弱」のように組み合わせて音楽性を生み出します。一方、音の強弱が少ない日本語では、俳句の五七五のように音の数でリズム・音楽性を生み出すことが多く、言語の特性による違いがあります。
ドイツには朗読の文化が古くからあり、詩も目で読むより声に出す・音で聞くものとして親しまれており、現在も町でよく詩の朗読会が開かれています。

詩人と作曲家とのコラボ

18~19世紀、ドイツ語の詩に後からメロディをつけた歌曲「リート」がたくさん作られ、一つの詩に複数の作曲家が曲をつけることもありました。「野ばら」はシューベルトやヴェルナーのほかにもたくさんの作曲家の作品があり、その数は150以上といわれています。「詩の音楽性×曲の音楽性」で異なる印象やメッセージ性が生まれることがあります。ただ、シューベルトはゲーテにあこがれて「野ばら」「魔王」など多くの詩に曲をつけたものの、ゲーテはそのドラマチックな音楽を好まなかった、というエピソードもあります。
このように近代ドイツの詩は音楽との結びつきが強く、音楽からその特徴や魅力を探る研究が世界中で行われています。

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先生情報 / 大学情報

上智大学 文学部 ドイツ文学科 教授 大田 浩司 先生

上智大学 文学部 ドイツ文学科 教授 大田 浩司 先生

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ドイツ文学、ヨーロッパ文学

メッセージ

私は大学で第二外国語としてドイツ語を選び、その硬質で端正な独特の美しさに魅せられて、ドイツ文学を専攻しました。文学というと「本を読む学問」というイメージが強いかもしれませんが、ドイツ文学は、音楽、美術、演劇とも深く結びついています。大学では、多様なジャンルの文学・芸術作品に触れながら、ドイツの人びとの精神性や社会のあり方に触れることができます。
ぜひドイツ語やドイツ文学の世界をのぞいてみてください。そこには、日本語や英語だけでは出会えない、新しいことばと文化の世界が広がっています。

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日本初のカトリック大学として開学し、創立当初から国際性豊かな大学として、外国語教育に重点を置いてきました。留学制度も充実しており、世界約80ヶ国に390校以上にも及ぶ交換留学・学術交流協定校があり、コロナ禍の2020年度、2021年度を除き、毎年約1,000人の学生が世界の様々な国や地域へ留学しています。また、少人数教育も本学の伝統のひとつです。教員と学生の距離が近く、また学生同士が率直に意見を交し合う、きわめて理想的な教育環境が整っています。他者を思いやり、社会に奉仕できる人材を育成します。