細胞壁から考える植物の成長や環境応答

分解しにくい細胞壁
植物細胞が動物細胞にはない細胞壁を持つことは中学の理科でも学びますが、その働きにはまだ不明な点もあります。動物と植物の成長を比べると、動物は手足などの形がそのままの比率で大きくなるのに対し、植物は葉や枝、根が付け加わるように形を変えながら成長します。この違いは、動物の細胞が早いものでは数日で新しい細胞に入れ替わるのに対し、植物の細胞壁は分解されにくく、つくられた細胞構造が長く残るためと考えられています。また、年輪を構成する道管細胞のように、死んだ細胞でも細胞壁は分解されず、そのまま機能の一部を担います。このように細胞壁は、植物の成長様式を特徴づけるだけでなく、外界との境界として環境応答にも深く関わっています。
金属に対する植物の応答
細胞壁を構成する主な成分はセルロース・ヘミセルロース・ペクチンの3つで、それぞれ鉄骨・ワイヤー・セメントのような役割を果たします。土壌中のカルシウムは、ペクチンがセメントとして働くために欠かせません。植物を引き抜くと根に土が付くのは、根から分泌されるゲル状のペクチンが土粒子をまとわせ、養分を取り込みやすくしているためです。一方、土壌には有害な金属もあり、アルミニウムは土壌が酸性になるとイオン化して根に付着し、成長を妨げます。しかし、酸性土壌に強い植物では、根から多量のペクチンを分泌し、アルミニウムの付着を防いで根を守っていることがわかっています。
持続的な農業への応用
植物が示す環境ストレス応答に関する知見は、農業への応用が期待されています。例えば、お茶のカテキンに含まれる成分をイネ科植物に与えるとペクチン量が増え、有害な金属イオンが多い土壌でも生育できることが明らかになりました。この成分はイネ科植物に特異的に作用するため、廃棄される茶葉を有効活用し、水田に発生する双子葉植物の雑草を抑えるほか、芝生づくりに使われるシバや、茅の材料となるススキの耐性向上に生かせないかという研究が進められています。
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