ピンクのハエがモテ、タタリが自然を守る 文化進化学の世界

進化する文化
生物学における進化とは、「集団の性質」が時間とともに変わることです。生物進化は遺伝子によって起こり、子孫を残しやすい遺伝子が集団に広まります。一方、文化進化は模倣などを通じてほかの個体から学習することで、その集団にある行動や思想、技術などが広まることです。農業の普及などが文化進化の一例です。親から子への遺伝子の受け渡しをしない分、文化進化の方が生物進化よりも速く進むこともあります。
ハエの「モテ文化」
文化の進化は人間だけの現象ではありません。サルの芋洗い行動や、鳥の歌も、仲間から学んで広まる文化の一種です。
ショウジョウバエを使った実験でも、似た現象が報告されています。オスをピンクのものと緑のものに塗り分けて、あるメスに「周りのメスはピンクのオスを好んでいる」という情報を与えると、その個体もピンクのオスを選ぶようになります。人間の流行のような「モテ文化」が、ハエでも起こるのです。
2~3週間で世代交代するショウジョウバエは、文化進化と生物進化、両方の変化を追うことができます。
近年の研究では、人間を含めたさまざまな生物で、文化と遺伝子が互いにどのように影響し合うのかを解明しようという研究も行われています。
「タタリ」が森を守る?
文化は環境にも影響します。「神聖な木を切るとタタリが起きる」という伝承を聞いたことがある人もいるかもしれません。このような信仰が実際に自然保護に役立つのか、人々の行動の違いを数式で考えた(つまり、数理モデルを使った)研究があります。すると、信仰が社会にある程度広まり、しかもタタリが怖すぎないときに、自然は守られやすいことがわかりました。丁寧に条件を整理することで、「怖すぎると信じなくなる」という傾向が見えてきたのです。
文化は単なる習慣ではなく、集団の行動を変え、その結果として環境や生き物の数にも影響を与えます。また、人間の文化の特徴は、ほかの生き物の文化と比べることで初めて見えてきます。
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