気孔がつなぐ炭素と水の循環

成長か生存か 植物のジレンマ
温暖化や豪雨など、地球規模で深刻化している気候変動の背景には、大気中のCO₂に含まれる炭素と、降水に関わる水の循環があります。これらの物質循環の中で、植物は重要な役割を果たしています。植物は葉の気孔を開いて光合成を行い、CO₂を取り込む一方で、水を蒸散によって大気へ放出しています。気孔を開けば光合成には有利になる反面、水分を失い、乾燥時には生命の危機にさらされます。植物はこの「成長」と「生存」のせめぎ合いの中で、気孔の開閉を巧みに調整しながら生きているのです。
葉の構造が決める気孔の応答
マレーシアの熱帯雨林をフィールドに、葉脈が網目状にはっきり見える樹木と見えにくい樹木の2つのグループに分けて調査が行われました。葉脈がはっきり見える葉は「異圧葉」と呼ばれ、内部が小さな部屋のように区切られた構造をしています。このタイプの葉は、強い光や高温、乾燥といった厳しい環境にさらされやすい高木に多く見られます。調査の結果、異圧葉では各“部屋”が環境ストレスに応答し、気孔の開閉を調整することで、光合成と蒸散のバランスを保ち、葉全体へのダメージを防いでいることが明らかになりました。一方、葉脈が目立たない樹木は中低層で育つことが多く、葉全体で一体的に気孔を開閉し、効率よく光合成を行っていることもわかりました。さらに高木では、朝の蒸散に必要な水を、幹や枝に蓄えた水で補っていることも示されました。
森林が支える気候システム
こうしたミクロな調査をもとに森林全体の循環をとらえることで、地球温暖化の抑制に貢献する可能性があります。また、海から発生した水蒸気が森林の蒸散によって内陸へと運ばれ、降雨をもたらすことで地表の温度上昇を和らげている可能性も考えられます。これらの研究と、ほかの温室効果ガスに関する知見を組み合わせることで、気候変動に伴う災害の予測精度の向上にもつながることが期待されます。
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